特集/コラム
ウイスラーへのゲートウエイ、「ウエスト・バンクーバー(West Vancouver)」を知る。
ウエスト・バンクーバー(West Vancouver)といえば、海と山のきれいな風光明媚な場所、高額所得者が住むエリア、ウイスラーへの通り道、引退したら住んでみたい場所など、いろいろなイメージがあるが、今回はオリンピック期間に多くの人が通る場所であり、知っているようで知らない場所「ウエスト・バンクーバー (West Vancouver)」について探ってみた。

何が「No.1」なのか。
「住民の平均所得がカナダNo.1。また家の価格もカナダでNo.1(自治体における平均)。他にはWest Vancouver Memorial Library(図書館)での貸出率がカナダでトップ。また自治体が運営するバスはカナダで最も長く運行している(1912年開始)。このバスはカナダで最初に車椅子での搭乗を100パーセント可能にした。このウエスト・バンクーバーを走るブルーバス(Blue Bus)はメトロ・バンクーバー内でも唯一、自治体運営のバスでダウンタウン行きに関しては、トランスリンク(Translink)社と乗り入れ提携をしている」(横山氏)。

他にも、先述のパークロイヤル(Park Royal shopping centre)は、カナダで最初に建設されたショッピングモールだったことをご存知だろうか?1950年のオープンだった。50年以上、バンクーバーの人に親しまれ、2004年にはパークロイヤルビレッジ(Park Royal Village)が完成した。同ビレッジ内に、ホーム・デポ建設が計画された際、ボックスストアはウエスト・バンクーバーにそぐわないとの反対で最初は否決され、現在あるホームデポは唯一妥協した形。特異なモダンスタイルの店舗として営業することとなった。
またパークロイヤル北側の裏に位置するミレミアム社開発の集合住宅「Evelyne」は、住民の反対で計画が再三、変更され、総個数を当初の予定より大幅に減らしことで建設が許可されたエリアで、予定より実質4年程延期されて許可が下りた。非常に街の景観に厳しい住民が多いようで、そのような住民によって、今もウエスト・バンクーバーのブランドが維持されているといっても過言ではない。
そのような中、1931年にビールで有名なギネスファミリーのブリッティシュ・プロパティー(British Properties)社が、ウエスト・バンクーバーの山の開発許可権を取得する交換条件として、橋(現在のライオンズゲートブリッジ)の架設とゴルフ場建設を行うことをウエスト・バンクーバー市と同意し、現在の姿となった。この時、1区画0.5 エーカー(約600 坪)で売り出され、当時7,500ドルで購入された土地が、70 年後の現在、古い家のままで(土地だけの評価で)120 万ドル(1.2 ミリオンドル)~150 万ドル(1,5 ミリオンドル)と約200 倍で売買された例もあり、インフレ率などを鑑みても金額上昇率はまさにロケット級である。その7年後、1938年にライオンズ・ゲート・ブリッジ(Lions Gate Bridge*別名First Narrows Bridge)が完成。当時の所有権はブリッティシュ・プロパティー社にあったが1955年にBC州に売却することとなった。余談だが、1986年のバンクーバー万博(Expo86 Vancouver)の際に、今でも夜間常時目を引く、橋のライトアップが始まったようだ。
その後、ブリティッシュ・プロパティー社は、Chartwellエリア、Westhillエリアと西に拡張し、昔ほどのブランド力はなくなりつつあるようだが、未だに富豪が住んでいることは間違いない。(今後、ダウンタウンを一望できるウエスト・バンクーバーの斜面は、すべて住宅地になる予定:横山氏談)
リッチなイメージのウエスト・バンクーバーだが、実際にはどんな人が住んでいるのだろうか?ウエスト・バンクーバー市、2006年の国勢調査によると下記のような人々がウエスト・バンクーバーに住んでいることがわかる。ウエスト・バンクーバーの23パーセント(約4分の1)は65歳以上の人が占める。80歳以上に至っては、2001年から2006年にかけて約20パーセント増加するなど、最も大きい増加率になっている。このシニア層の約3分の1(29パーセント)は一人暮らしというデータもある。高齢者が多いという結果だ。ただ最も多い層は裕福な中年層で、約4割になり、カナダ内外からの移住者も多い。また15歳~19歳の若者も多く、全体の7.8パーセントを占め、メトロ・バンクーバー全体の6.5パーセントより高い値を示す。20歳~29歳は、8.3パーセントと、メトロ・バンクーバー全体の13.8パーセントより低く、この層は両親と一緒に住んでいるようで、家の価格が高いウエスト・バンクーバーということであれば頷ける。15歳~24歳で区切ると、93パーセントは親と同居、メトロ・バンクーバー全体の79パーセントと比較しても高い値である。0歳~9歳の子供は7.9パーセントとメトロ・バンクーバー全体の10.3パーセントより低いが、これは20歳~29歳のヤングアダルトと呼ばれる層が少なく、住居費が高いからだと、市は定義づけている。また家族構成では、57パーセントが結婚しており、独身者は43パーセントになる。
また民族的な違いについて調べてみたが、実際、visible minoritiesと呼ばれる層は全体の23パーセントで、残りの77パーセントは白人系になる。そのマイノリティーグループの詳細は、中国系35パーセント、西アジア系25パーセント、韓国系11パーセントとなっている。またウエスト・バンクーバーの28パーセントは、第1言語が英語ではなく、多い順にペルシア語、続いて中国語(マンダリン、カントニーズ)、ドイツ語となり、2001年の中国語、ペルシア語、ドイツ語と比較すると、ペルシア系の移民が増えたことが分かる。
藤原氏は、日本からの親子留学を数多く手掛けてきて、その中でもウエスト・バンクーバーの学校を勧める理由は「もちろんウエスト・バンクーバーに住んでいるということもあるが、安全で、教育レベルが高いというだけでなく、どこの学校もアットホームな環境。子供たちが自然に育っていく環境が整っていることから最もお勧めする」と藤原氏は話す。実際にFSA(Education’s Foundation Skills Assessment)テストでは、Grade4,7,10で、過去5年間、最も高い成績を残しているのがウエスト・バンクーバーの生徒たちである。また高校卒業率は90パーセント以上とBC州内で最も高く、大学(University or College)進学率は80パーセント以上で、その内UBCに入学できる率は65パーセントという結果もあるようだ。
上記のような教育を司るウエスト・バンクーバー教育委員会(West Vancouver School Board)は、世界中から来る子どもたちの受け入れ体制をいち早く強化し、実際に数多くの子どもたちを受け入れてきている。現在も日本を含めて数多くの国でプロモーションを行っているウエスト・バンクーバー教育委員会のDr. ROD MATHESON氏は、「カナダの公立学校に海外の子どもたちを受け入れるインターナショナル・プログラムは、1982年にウエスト・バンクーバー教育委員会がカナダで最も早く実施した。海外の生徒を受け入れ始めたのは、基本的に白人(Caucasian)が多い環境の中で、もっとさまざまな文化を取り入れ、多様性のあるコミュニティにする必要があるということが主な理由。その結果、今から15年前には6,800人の生徒中、インターナショナル・ステューデント(International Student)は200人を占め、今では7,000人の生徒の内、600人がインターナショナル・ステューデントを占めるまでになった。もしこのプログラムを始めていなければ、単純に生徒数が6,600人、6,400人と減少していたであろう。数が減れば必然的にBC州からの財源も減る」と話す。ウエスト・バンクーバーも少子化の波にあるようで、カナダ国が海外からの移住者を促進するように、海外からの留学生を増やしていかないと学校経営が成り立たない現状があるようだ。ROD氏は、他に収入(Revenue)部分についてこう指摘する。「ESLなどを含めて、学校経営にはお金がかかる。インターナショナル・プログラムはその面にも貢献している」と。
現在、BC州からの教育財源は年間49百万ドル(49ミリオンドル)で、1生徒当たりの州政府の補助金はBC州の中でウエスト・バンクーバーが最も少なく、これで学校経営を行うことは非常に厳しい。そんな中、このインターナショナル・プログラムは全体の2割弱、約8百万ドル(8ミリオンドル)以上を稼ぎ出すまでに至っている。他にも、5年前に越境して他のエリアの公立学校に通学することが可能になり、ダウンタウンやノース・バンクーバーなどから600人の生徒がウエスト・バンクーバーに通っている。インターナショナル・ステューデント600人、越境生徒の計1,200人が、全体の7,000人の中に含まれており、このような受け入れ施策のお陰で現在も上手く学校経営ができているようだ。
今年3月に、コミュニティセンターに付随する形で、旧来のアクアティックセンター(プール)が、とてもきれいな施設に蘇った。このウエスト・バンクーバーの公営プールは、塩素を使わないで水を浄化するという最新技術を採用。カナダだけでなく、世界的にも最新鋭のテクノロジーが使用されている。このプールに1回数ドル前後で入ることができる。他にも先述の15ブロックほどの長さのあるSea Wall遊歩道や、数多くの公園、スキー場、ゴルフ場と、充実した公営の施設が多く、住民に対してよりよいサービスを提供できるのは、Property Taxを基本とした多額の税金のお陰であることはいうまでもない。土地が高く、安全で、教育環境のいい場所に誰もが住みたい。ただ開発にも限りがあり、空いている空間に住めるには、資産家や高額所得者といったお金にゆとりのある層となってしまい、一般の人が住むには高嶺の花である。ただそのようなウエスト・バンクーバーではあるが、公共施設を利用することは誰もができる。まずは公園やプールといったところからウエスト・バンクーバーを体験してみるのもいいだろう。またウイスラーに行く途中に、自然観賞やショッピングに立ち寄ってみるのもいい思い出になるだろう。
ブルース 横山氏藤原 美信氏
フューチャーグローブ教育研究所代表
Dr. ROD MATHESON
松岡 治男氏

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