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自殺防止に取り組む禅僧を追うドキュメンタリー バンクーバー国際映画祭で

映画「The Departure」のワンシーン(提供=VIFF)

映画「The Departure」のワンシーン(提供=VIFF)

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 現在開催中のバンクーバー国際映画祭で岐阜県大禅寺で自殺防止活動に奔走する僧、根本一徹さんを追うドキュメンタリー「The Departure」が上映された。

The Departureを撮影したラナ・ウィルソン監督

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 たまたまニューヨーカー誌の記事を読み根本さんについて知ったというラナ・ウィルソン監督。「記事を読んだ時は、死のうとしている人にどのように話すのか、そして彼が行う『旅立ち(Departure)』という『死を体験するエクササイズ』がいったいどのようなものかに興味が湧いた」と制作のきっかけを話す。

 日本へ行き根本さんに会い、自殺防止活動についてリサーチを進め、映像化を決意。3年間で合計8回日本に行き撮影し、作品を完成させた。「物静かな僧をイメージしていたが、実際の根本さんは気さくで話しやすい人だった。スタイリッシュだし、クラブやカラオケにも行く」と根本さんの第一印象を話す。「何より彼も命や死について深く考え悩んでいる人だと分かり、彼を中心に撮りたくなった」とも。

 映像は自殺願望のある人に、大切なものが全て無くなる「死」を実感してもらう「旅立ち」エクササイズのシーンから始まり、「死にたい」と連絡して来る人たちと話すために昼夜を問わず、時には遠方まで出掛けてゆく根本さんの日々を追う。

 心が重くなりがちな相談者との会話の合間には、生命のシンボルのような幼い息子さんのかわいらしい姿を挟む。「共に過ごす時間を多く取れない息子さんへの愛と自分自身の命について不安を抱きつつ、自殺願望のある人をいかに救えるかと悩みながら奔走し続ける根本さんの姿にとても引かれた」とウィルソンさん。「『助ける』という上からの目線ではなく、同じ目線から問題を一緒に考え、自分の問題もさらけ出して共感する『人は皆つながり、助け合っている』という彼のフィロソフィーにとても感銘を受けた」とも。

 日本での撮影には、プロデューサーで通訳のEri Yokoyamaさんはじめ数人から言語面に合わせて文化やマナー面もアドバイスを受けたという。相談に来る人が話しやすいようにカメラの位置は少し離し、対象者の目を見ないように撮影。日本語が分からないため、何の話をしているのか何が起こっているのか分からない時もあり、「ドラマチックな場面を見逃してしまったこともある」と笑いながらも、「日本語が分からなかったからこそ、相談に来る人がカメラが回っているのに(内容を理解される気兼ねもなく)話しやすかったようだ」と明かす。

 ウィルソンさんは「映画をみる人にはスクリーンと共に『Departure』のエクササイズに参加してみてほしい。自分の大切なものとして何を思い浮かべるのか、最後に何を感じるのか、そして死と生きる意味について根本さんと一緒に考えてもらえれば」と期待する。

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