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バンクーバーでアニメ「ジョバンニの島」上映 日系カナダ人収容所経験者のトークも

バンクーバーで行われた「ジョバンニの島」の上映会で日系人への差別について話すHoriiさん

バンクーバーで行われた「ジョバンニの島」の上映会で日系人への差別について話すHoriiさん

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 バンクーバーのTheatre(1181 Seymour St. Vancouver、TEL 604-683-3456)で4月12 日、日本のアニメ「ジョバンニの島」が上映された。上映前後には、日系カナダ人のAkira Horiiさんを迎え当時の日系人への差別や収容所生活の様子などを語るトークイベントも行われた。「Reel 2 Reel Film Festival」 の一環で日系センターの協力によるもの。

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 「ジョバンニの島」は宮沢賢治作の童話「銀河鉄道の夜」をモチーフに、戦後ソ連軍により占領された色丹島で生きる幼い兄弟のたどる過酷な運命を描く作品。ソ連軍の上陸、家屋の没収など先が見えないつらい日々の中でも、兄弟はソ連軍人の子どもと心を通わせ友情を育んでゆく。しかし、兄弟の父が強制労働に連行され島民は樺太の収容所に強制移送。故郷を離れた兄弟はつらい生活の中、支え合いながら父との再会を目指していく。作品中には「銀河鉄道の夜」のフレーズが効果的に挟まれ、悲しい物語に幻想的な美しさを加えている。

 映画鑑賞後、Horiiさんは「この島の人たちは戦争に負けて敵に占領されたので(自分の場合と)状況は違うが、飢えと寒さで苦しんだ収容所の様子、財産を没収されたこと、幼い家族を亡くしたシーンなど自分の体験と重なるところがあり胸が痛んだ」と感想を述べた。

 「日系2世の自分は、ストラスコーナ小学校に通う愛国心が強い普通のカナダ人の子どもだった。戦争で『敵性外国人(enemy alien)』となった時はとても混乱し、ショックだった」と振り返る。「収容所があったイーストリルエットでは水も電気もなく、家の中も凍り付く寒さで苦労したが、大人たちが子どものために学校を作ったり、皆でトマト栽培を始めたりと協力して乗り越えた」と当時の写真を交え説明した。

 当時、日系人は川を越えてリルエットの町に入ることは禁止されていたが、日本でも話題になった映画「バンクーバーの朝日」の元選手、上西ケイさんが同じ収容所におり野球チームを結成。野球のおかげで川向こうの町に行き試合も許されたというエピソードも語り、同映画がきっかけで多くの人に日系人の歴史が知られたことへの感謝も話した。

 「3世の自分の子どもたちは白人や中国系カナダ人と結婚して、孫も皆カナダ人として幸せに暮らしている。戦争や人種差別で多くの人がつらい思いをした悲しい歴史を伝えるのは、平和を維持するためにできる自分の義務だと思っている」と、今後も機会があれば経験を話していくという決意を静かに語った。

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