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映画「母と暮せば」、海外初上映 吉永さんと坂本さんがバンクーバーで舞台あいさつ

上映前に、英語でスピーチをする吉永小百合さん

上映前に、英語でスピーチをする吉永小百合さん

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 バンクーバー・ダウンタウンの劇場「Vancity Theatre」(1181 Seymour Street, Vancouver)で5月4日、長崎の原爆を題材にした映画「母と暮せば」(英題=Nagasaki: Memories of My Son)の無料上映会が開かれ、吉永小百合さんと坂本龍一さんが舞台あいさつを行った。

舞台あいさつをする坂本龍一さん

 同作品の海外初上映、日本を代表する女優と音楽家が来場するとあって、当日は開場時間の7時間以上前、朝11時には一番乗りのグループが到着。イベント開始2時間前にはすでに200人以上が会場周辺の通りを取り囲むように長蛇の列をなしたが、同劇場の収容数は全170席。「チケットは先着順のため、入場できない可能性もあることを了承した上で並んでください」と、スタッフが最後尾まで説明しにいく姿もあった。

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 イベントが始まり、吉永さんと坂本さんが登場すると、会場は歓声と大きな拍手で沸いた。吉永さんは「皆さん、吉永小百合です。今日は坂本龍一さんと一緒にこちらに来ることができて大変光栄です。私の119作目となるもので、愛する息子を長崎の原爆で一瞬にして失ってしまった母親を演じています。坂本さんが心に響く素晴らしい音楽を作って下さいました。この30年、原爆詩の朗読を続けていて、昨日はUBCで坂本さんのピアノ演奏とともに、福島の人たちが書いた詩も合わせて被爆者の詩を紹介しました。今日はさらに特別な機会として、私の記憶に残る大切な作品をバンクーバーで上映できることになり、皆さんが楽しんで下さることを心から願っています」と、一言一言、丁寧にかみしめるように英語でスピーチした。

 続けて、坂本さんも流ちょうな英語で、「2014年日本でオーケストラと一緒のツアー中に山田監督と吉永さんが楽屋に来られて、この映画のための作曲をお願いされました。こんな偉大なお二人から頼まれたらもちろん誰も断れるはずはなく、(がん闘病中に)少しずつ曲を完成させました」と作品に関わることになったいきさつを笑顔で紹介した後、「一見、家族の温かいやり取りが描かれた作品に見えますが、71年前に長崎で起きて、そして現在もまだ続いている原爆の悲劇を取り上げてある映画です。山田監督はその問題に警鐘を鳴らそうと、今を生きる長崎市民の皆さんからなる合唱隊にラストの『レクイエム(鎮魂歌)』を歌ってもらいました。どうぞお楽しみください」と力強く語りかけた。

 上映中は、二宮和也さん演じる息子の浩二と、吉永さん演じる母親の伸子の軽妙なやり取りや、一人生き残った伸子を支える周りの人たちとのふれあいに笑いが起きる場面もあったが、会場のあちこちですすり泣いたり、涙を拭いたりする観客の姿が多く見られた。

 130分の上映後、観客は「母と子の間のやり取りを通して親子の愛が美しく描かれていたが、カナダでは原爆のことについてあまり詳しく勉強してきていないので、原爆が落ちた瞬間にインクの小瓶が溶けてしまったシーンはショッキングで、頭に焼き付いてしまった。たった一発の爆弾が多くの人の命を奪い、家族が一瞬で引き裂かれて永遠に悲しみを背負い続けている事実を知ることができた」(Matthew Fladmarkさん)、「長崎の坂道、地元の教会、賛美歌、全てが懐かしく、ふるさとの言葉がダイレクトに胸に刺さった。悲しい現実を受け入れて、戦後ずっと賛美歌を歌い、祈り続けてきた長崎の人たちの姿に涙が止まらなかった。二宮さんや吉永さんの表情が見事に、当時の人たちの悲しく切ない気持ちを映し出していたと思う」(芦澤法子さん)、「13歳になる息子と一緒に観賞していたので、自分たちとつい重ねてしまって何度も涙が出た。息子が『死んでからも会えるの?』と、ここ数年聞き続けていて、今日の映画を見て息子が少しほっとしたようで安心した。『戦争は津波とかと違って人の手で起こったものだから、(戦争で死ぬのは)運命ではない』という伸子のセリフが強く印象に残っている。見終わってからもまだいろいろ考えたり息子と話したりしている」(福岡洋子さん)と、目を赤く腫らしながら口々に感想を語った。

 同作品は今後、台湾、フランクフルト、トロントなどでも上映予定。

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