「第30回バンクーバー国際映画祭」で10月2日、ドイツの原発停止を追ったドキュメンタリー「アンダー・コントロール」(Volker Sattel監督作品)が上映され、近日中に日本での上映予定があるため来加できなかったSattel監督に代わり脚本家のStefan Stefanescuさんが上映後の質疑応答に応じた。
同作品はチェルノブイリ原発事故以降、脱原発を推進してきたドイツで現在も稼働中の原子力発電所内と、停止、解体された発電所で撮影されたドキュメンタリー。所員や関係者へのインタビューなども交え2008年に撮影を開始、今年2月にベルリン映画祭で初公開された。
作品では発電所見学ツアーで所員が行う安全システムの説明や、所内で働く作業員が除染、被ばくチェックを徹底する様子を紹介する一方、既に停止となった発電所で放射性廃棄物処理を黙々と行う作業員の姿も追う。多くの雇用を生み出し有効なエネルギー手段として考えられてきた原発を惜しむ声も交えながら、停止後にも多大な作業と費用がかかる点など問題点の提示もしている。
上映後の質疑応答では多くの来場者から活発な質問がされ、「ドイツはフランスをはじめ多くの原発所有国に囲まれている。電力輸入の負担が増えるし、全ての原発を停止するという判断は利点がないのでは」との声にStefanescuさんは「それでも50キロ圏内に住むよりはましという考えが多数だと思う。特に福島の事故からは停止を希望する声が多い」と返答した。
「撮影にあたり被ばくの心配はあったか」の質問には、「防護服の着用や除染、被ばくカウンターでのチェックなども厳守したが、最初はとても怖かった。しかし、毎日放射線量を測るうちに慣れてきて、『この量なら自然界で受ける量と変わりないので影響はない』など冷静に判断できるようにもなった」と答えた。観客のひとりからは「どんな書物で読む知識よりも現実の様子を見ることで多くを学べた。ありがとう」との感謝の言葉も。
Stefanescuさんは「この映画は原発停止が正しいか間違っているか、という視点ではなく、ユートピアのように語られた原発と、停止に向かっているドイツの現状、停止後の様子などを、内部で働く人の視点も併せて、そのまま見てもらうことを目的に作った」と話す。