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辻井伸行さん、バンクーバーでリサイタル-震災への思いを込め、聴衆魅了

日本人ピアニスト、辻井伸行さん

日本人ピアニスト、辻井伸行さん

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 バンクーバーのUBCにあるRoy Barnett Recital Hall (6361 Memorial Road, Vancouver)で3月10日、日本人ピアニスト辻井伸行さんがリサイタルを開催、心に響く澄んだ音色で聴衆を魅了した。St.John’s College UBC、 UBC The School of Music 、 UBC Access & Diversity の共催。

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 リサイタル前インタビューに応じた辻井さんは、今回の演目であるショパンとドビュッシーの曲について「どちらも小さいころから大好きな作曲家。ドビュッシーはフランスの作曲家で色彩感があり絵画的な曲が多く、ショパンは優雅さ、エレガントさ、祖国への愛を感じる作品などがある。美しい曲ばかりなので聴いていただく方にも楽しんでもらえるのでは」と話した。特にショパンについては「小さいころからよく弾いていたので、弾いていたら多くの思い出が浮かんでくる」ほどの思い入れも。

 日本国内だけでなく、海外での演奏も多い辻井さんはツアーの多い日々を「時差ぼけもしないし新しい街に行くのをとても楽しんでいる。旅も好きだし食べることも大好きで日本食以外でも大丈夫なので、訪れた街ではその土地の食べ物や飲み物を試している。(旅の多い)音楽家として旅が好だというのは良かったなと自分でも思う」と笑顔を見せる。

 音楽が好きな母親の影響でいつも身近に音楽があったという辻井さん。子どものころにもピアノの練習が嫌だと思ったことは一度もなく「ピアノを弾くことが大好きだし、人前で弾くことも好きなので、自分のピアノを聴いて喜んでもらいたい、楽しんでもらいたい、そう思うと練習も楽しんですることができる。やはり音楽は楽しむものだと思うので」とピアノの楽しさを話す。

 自作曲も多く発表しているが、「自然の中で小鳥のさえずりや、川のせせらぎ、風の音などを聴いていると曲が浮かんでくることが多い。今後は映画音楽もまたやってみたいし、もっと勉強してソナタやコンチェルトなども書いてみたい。将来色んな方に演奏してもらえるような曲が書けるようになりたい」と意欲を見せる。

 ピアノ曲に関しては「大好きなショパンをもっと弾きたいし、ベートーベンのソナタも全曲弾いてみたい。ドビュッシーももっと弾きたいし、きりが無いくらいたくさん弾きたいピアノ曲がある。まだ若いのでこれからもっと勉強していろいろな作曲家の作品をレパートリーを増やして世界にはばたけるピアニストになりたい」と尽きない希望を話す。

 クラッシック以外の音楽も好きでプライベートでは「友人たちと行くカラオケで氷川きよしさんの曲を歌うのが好き」という一面も。近年増えている他のジャンルの音楽家との共演も「素晴らしい音楽家の方がたくさんいるので、良い刺激ももらえありがたいと思っている。今後も機会があればどんどん挑戦していきたい」と意欲を見せ、「ジャンルや言葉を越えても音楽は世界共通なので本当に素晴らしいなと思う」と音楽を心底楽しんでいる様子を見せた。

 当日演奏されたのはドビュッシー作曲の「2つのアラベスク」「ベルガマスク組曲」「喜びの島」、ショパン作曲の「華麗なる円舞曲」「スケルッツオ第2番」「英雄ポロネーズ」など8曲。アンコールではリストの「ラ・カンパネラ」、ショパン「別れの曲」、震災への思いを込めた自作曲「それでも、生きてゆく」などを披露。澄んだ音色と曲の合間に見せる笑顔で満席の聴衆を魅了した。

 日本時間では3月11日にあたる10日の夜に行われた今回のリサイタル。辻井さんはこの日の演奏を「震災で被災された方々とそのご家族、支援の手を差し伸べてくださった世界中の人々」と2月27日に逝去したアメリカ人ピアニスト、ヴァン・クライバーン氏にささげた。

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