バンクーバー・ダウンタウンのコンベンションセンター(999 Canada Place, Vancouver)で8月5日~7日、アニメフェス「Anime Revolution」が開催された。
今年は日本から、藤村歩さん、関俊彦さん、朴ロ(王へんに路)美(パク・ロミ、Romi Park)さんの声優3人と音響監督の高寺たけしさんが、特別ゲストとして来場し、現地のアニメファンたちと交流を図った。
会場に集まったコスプレ姿の多くのファンを目にした藤村さんは「コスプレのレベルもいろいろな作品についての知識も高くて、とにかく海外の皆さんの熱意に圧倒された」と驚き、「国によって人気のあるキャラクターが違うのも面白い。サイン会などでファンの皆さんが持ってきてくれるアイテムを見ると、その国で自分のことをどの作品で知ってくれているかが分かって興味深い」と話す。
藤村さんは自分の声優としてのあり方がはっきりと決まった役について、「ガンダムUCのミネバ・ラオ・ザビは演じるのがとても大変だったが、あの役をきっかけに仕事も増えて、業界やファンの人たちに私のことを知ってもらえた」と振り返る。ファンとの交流について、「自分のことを文章にして定期的に更新するブログなどのSNSは一切やっていないので、今のところは作品のキャラクターを通して私のことを知ってもらうしかないが、ラジオに出演したり、このように直接皆さんと触れ合える場で一気にお話したりする方が自分には合っていて楽しい」と笑顔を見せる。
朴さんはスタジオに入るときの心構えを「緊張感は必要だが、緊張はしないようにして、(ほかの声優たちと)バカ話ばかりするようにしている」と、Q&Aセッションでもユーモアあふれるやりとりを繰り広げた。
「今ちょっと落ち込み気味の自分のことを『進撃の巨人』のハンジの声で励ましてほしい」というファンには、ちゃんと本人の名前を呼んでから、「大丈夫。君ならできるよ」と目を見つめて語りかけたり、「鋼の錬金術師」のエドワードファンのリクエストに応じて、「俺の人生半分やるから、お前の人生半分くれ」と、プロポーズさながらの熱演をしたりするなど、大サービス。アニメ作品がきっかけで日本語を勉強し始めたというファンは「日本語、頑張ってください。愛してるぜ」とエドワードの声で呼び掛けられ、感動で泣きそうになる一幕もあった。
男性役が多い朴さんが、「普段の生活の中で男っぽいしぐさや話し方が出過ぎて、当時の彼氏が逃げたこともあった」というエピソードを紹介すると、会場は大爆笑に包まれた。
「エドワードは終わるととっても疲れた。あいつは本当に心の中に土足で入り込んできて、引っかき回してぐちゃぐちゃにして出て行くので、本当に難しかった。でも悔しいけど一番親近感が沸くのもエドワード」と話し、1時間の質問コーナーで約50人のリクエストに対応したパワフルな朴さん。
朴さんが、「声優の仕事は、台本と映像を頂いてからどれだけ読み込めるかにかかっている」と話すのに対し、音響監督の高寺さんは、声優に必要なこととして、「心身ともにタフであること」を挙げ、「性格や声はいろいろあった方がさまざまなキャラクターを作るために必要だが、それだけでは駄目。体力はもちろん、気持ちが強くなければ、オーディションで落ちたり、自分で作り上げてきたものにスタジオでダメ出しの連続だったりすることはよくあることなので、その度にいちいち落ち込んでいてはどうにもならない」と声優を目指している人たちへエールを送る。
アニメ業界の今後に関しては、「最近は、歌やトークもできたりするマルチな声優さんが増えているので、自分もいろいろなことに挑戦した方がいいのかなと思うこともあるが、お芝居が好きでこの世界に入ったので、お芝居一本でやっていくのも役者としてかっこいいのかなとも思ったりして、自分自身の将来について、日々模索しているところ」と藤村さん。
関さんは「自分が声優を始めた頃に比べると、声優志望の人の数が格段に増えて飽和状態になっており、それとともに声優という仕事の枠組みがマルチ化せざるを得なくなっている。いろんな才能があることには拍手を送りたいが、『演じる』という本来の俳優としての原点に立ち返ることも大事」と話す。
「初めてロスのアニメイベントに参加したときに、自分や自分の仕事のことを夢中で調べてくれているファンの人がいることを知り、日本のアニメが世界に発信されているのを体で感じて、とてもありがたく思った」とも。
「国レベルではいろいろと政治的な問題が起こっているが、庶民レベルでは、アニメを通して世界の人たちと手を取り合って仲良くなり、世界とつながって絆を作るための大きなツールになっていけるはず。このようなイベントを通して少しでも声優としてそのつながりを推し進められればうれしい。できれば政府レベルでのサポートを得て、もっと大きなアニメイベントが開催できれば」と期待を寄せる。