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日系カナダ人監督作品「東北の新月」、バンクーバーで上映 被災地の現状伝える

リンダ・オーハマ監督(写真右)のほか、作品中で登場する佐々木賀奈子さん・星瑛来(セエラ)さん親子、アシスタントプロデューサーの長尾光徳さん親子も来場した

リンダ・オーハマ監督(写真右)のほか、作品中で登場する佐々木賀奈子さん・星瑛来(セエラ)さん親子、アシスタントプロデューサーの長尾光徳さん親子も来場した

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 10月14日、盛会のうちに幕を閉じたバンクーバー国際映画祭。今年も多くの日本関連作品が上映されたが、中でも日系三世カナダ人のリンダ・オーハマ監督のドキュメンタリー「東北の新月(英題:A New Moon Over Tohoku)」は、地元ブリティッシュ・コロンビア州で活躍する監督たちの才能をたたえる部門「BC Spotlight」の作品として上映され、多くの観客が集まった。

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 舞台あいさつと質疑応答が行われた会場には、作品中で登場した岩手県大槌町で被災し、地域の人たちの手当てに奔走している鍼灸(しんきゅう)師、佐々木賀奈子(かなこ)さんと娘の星瑛来(せえら)さんが特別ゲストとして日本から来場したほか、オーハマ監督が自身の「第二のふるさと」として愛してやまない広島県尾道市から、同作品でアシスタントプロデューサーを務めた長尾光徳(みつのり)さんと2人の息子たちも応援に駆け付けた。

 2年半の被災地滞在の間に、計82人にインタビューを行い、撮影時間は800時間にも及んだ。長時間の編集作業を経て、最終的に完成するまでには5年近くかかった同作品。制作費用は限られており、震災後で宿泊施設も整っていない環境の中、テントと寝袋、カメラ、三脚を担いで毎日撮り続け、「一日に豆腐1丁しか食べられなかった日もあったり、疲れ切って動けなくなりそうな日もあったりしたけれど、東北の人たちの大変さを思うと、泣き言は絶対に言えなかった」と目を潤ませるオーハマ監督。

 「(タイトルに決めた)『新月』は、目に見えてはいないけれど、闇の中で満月と同じ大きさの引力を持ってしっかりと存在していて、その様子が東北の人たちの姿と重なった。撮影を通して出会う人たちが皆、多くのものを失ったにも関わらず、『生きる』力にあふれていたことがとても印象深かった」と振り返る。

 上映後、会場を埋め尽くした観客からは、「日本人の『頑張る』精神をいろいろな角度から表現してあり、見ていてとてもうれしかった」「当時ニュースで見ていてがくぜんとしたことをいまだに覚えている。現地の現在の様子はあまり伝わって来なくなってしまったので、こうして知ることができてよかった」などの声が上がった。

 「被災した人たちが、今必要しているのは何か。カナダにいる私たちに何ができるか」との質問に対し、賀奈子さんは「世界中の皆さんが東北のことを忘れることなく、ずっと思ってくれているということ、気に掛けてくれることが一番うれしくありがたい。今回皆さんに東北の現状、被災した人たちの強さや今でもずっと頑張り続けている様子について、この映画を通して知ってもらえたこと、カナダの皆さんがそれをきちんと受け止めてくださったことを自分が町に持ち帰って皆に伝えたい」と答えた。

 「皆が元気になった様子をまた伝えに戻って来られるよう、そして次にもし世界のどこかで何かが起こった時に、今度は自分たちが助ける側になって何か力になれるようにこれからも頑張りたい」と涙ながらに力強く訴えると、会場から大きな拍手が沸き起こった。

 同作品は今後、ハワイ国際映画祭(11月4日・6日)、ローマ・インディペンデント映画祭(11月~12月)での上映が決定している。

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