バンクーバー在住・鵜沢梢さんが「ドナルド・キーン翻訳賞」受賞-現代短歌で初

左からアリゾナ大学のトニー・チェンバース先生、ドナルド・キーン先生、鵜沢梢さん、アメリア・フィールデンさん。(撮影・間ルリ)

左からアリゾナ大学のトニー・チェンバース先生、ドナルド・キーン先生、鵜沢梢さん、アメリア・フィールデンさん。(撮影・間ルリ)

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 アルバータ州レスブリッジ大学の元助教授で、現在バンクーバー在住の鵜沢梢(うざわ・こずえ)さんが、米・コロンビア大学が主催する「2007年日米友好基金日本文学翻訳賞(通称ドナルド・キーン翻訳賞)」を受賞した。

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 授賞作品は米国Cheng & Tsui社から刊行された「Ferris Wheel: 101 Modern and Contemporary Tanka(観覧車:英訳現代短歌101首)」で、オーストラリア在住のAmelia Fieldenさんとの共訳。寺山修司さんから河野裕子さん、俵万智さんまで合計101首の現代短歌を、1首につき日本語・ローマ字・英訳の3つの表記でまとめている。

 同賞は、1979年に日本文学の翻訳活動を促し、より広く日本文学を世界に伝えることを目的として創設されたもので、1987年から「ドナルド・キーン日本文化センター」が運営を引き継いだ。毎年、最も優れた現代・古典文学の翻訳に対して6,000ドルの賞金とともに授与される。

 同センターは、日本文学や日本文化を西洋へ紹介し、学者、教育者、翻訳家としても世界的に有名なドナルド・キーン教授にちなんで命名され、米国での日本と日本文化についての理解を深めることを目的として、大学教育や学術研究の推進と一般向けの公開講座などを行っている。

 東京都出身の鵜沢さんは、1971年にカナダへ移住。UBC(University of British Columbia、ブリティッシュ・コロンビア大学)で図書館に勤務しながら、1987年に大学院修士課程を修了後、1994年には同大学で言語教育学の博士課程を修了した。バンクーバーの短歌勉強会に入会して作歌を始め、茶道誌「淡交(たんこう)」の歌壇に毎月投稿した中の一首が年間最優秀賞に選ばれたり、朝日新聞「折々のうた」に作品が掲載されたりした経験もある。次第に短歌の英訳にも興味を持ち始め、日本の英語短歌雑誌「タンカジャーナル」に投稿した作品が、Ameliaさんの目に留まったことが今回の共同英訳プロジェクトのきっかけとなった。

 4月18日に米・ニューヨークで開かれた授賞式に参加した鵜沢さんは「中には訳しづらい短歌もあったが、好きな短歌を英訳する作業は苦労というよりも楽しいものだった」と話し、今回の著作の中で特に気に入っている作品は、小島ゆかりさんの「渡らねば/明日へは行けぬ/暗緑の//この河深き/かなしみの河(I cannot reach / tomorrow / unless I cross / this river of deep green / this river of deep sorrow )」で、「英訳がピタリと決まった作品」という。

 「俳句に比べるとまだ短歌の英語圏での認知度は低いので、『タンカ』が『ハイク』のレベルに達することができるように、現在、編集発行を担当している英語タンカ誌『GUSTS』に一層力を入れていきたい」と今後の抱負を語る。4月30日には寺山修司さんの英訳短歌集「Kaleidoscope(万華鏡)」が北星堂書店から発売予定。

 同賞の日本古典文学部門では、米・アリゾナ大学のAnthony H. Chambers教授が「雨月物語」の英訳で受賞した。

The Donald Keene Center of Japanese Culture北星堂書店Cheng & Tsui

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