井早智代さんの展覧会「Water, Rice and Bowl」、リッチモンドで始まる

バンクーバー在住の日本人アーティスト井早智代さんの展覧会「Water, Rice and Bowl」がリッチモンド市で開催されている。

バンクーバー在住の日本人アーティスト井早智代さんの展覧会「Water, Rice and Bowl」がリッチモンド市で開催されている。

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 Richmond Art Gallery(7700 Minoru Gate, Richmond、TEL 604-247-8300)で、バンクーバー在住の日本人アーティスト井早智代さんの展覧会「Water, Rice and Bowl」が開催されている。5月の「Asian Heritage Month(アジア文化継承月間)」にちなんだイベントの一環。

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 展示作品は、大小さまざまな和紙に描かれたエッチングや水彩画のほか、和紙で制作した人形を壁全体に配置したインスタレーションなど約10点。「水」をテーマにした16分25秒のドキュメンタリー映像を上映するコーナーも設け、チベットの方言Ladakhiで「水の大切さ」をうたった「Water Songs」を聴くこともできる。

 井早さんは三重県出身。立教大学独文科を卒業後、ロータリー財団奨学生として来加し、Mount Allison University、Emily Carr Institute of Arts and Design、Capilano Collegeで美術を学んだ。2002年にアルバータ大学で美術学修士号(MFA)を取得後、バンクーバーを拠点としてインドやメキシコ、タイなど世界各地を巡り、現地の文化に直接触れ合いながら制作を続けてきた。

 今回のテーマは「特に意識したわけではなく、自然と作品の中に表れてきたもの」という井早さん。「どこの国を訪ねても、『水』と『コメ』はその土地の人の生活に密接な関係を持っているように感じた。自分自身も体の一部として育ってきたし、ただ飲んだり食べたりするものであるだけでなく、何か奥深い意味を持っている」と話す。

 制作過程のエピソードとして、「アーティストとして生計を立てていくことは大変だが、作品の制作中に『苦しい』とか『大変だ』と感じたことはない。作品に取り組むことがむしろ心のより所になっていて、まるで6歳くらいの子ども時代に戻ったかのように夢中になって楽しんでいる。過去の展示で用いた同じ人形を使っていても、会場にある空間とその時の自分の精神状態によって完成する作品が異なり、語りかける内容が違ってくるのが面白い」とも。

 井早さんは「今回の作品を通じて世界平和を訴えたい。作品の解釈は、見る人によってそれぞれ異なると思うが、自分の作品の中から何かしら個々に通ずる部分を見つけることによって、忙しい毎日の中で少しでもいいので立ち止まって自分の人生を違った角度から見てみたり、深いところにある意味などを考えるきっかけになれば」と期待する。

 展覧会に先駆けて4月25日に開かれたオープニング・レセプションでは、多くの来場客に交じって井早さん自身が作品に関する質問に応じたり、談笑する姿が見られた。同ギャラリーの理事を務めるWilla Walshさんは「会場に入ってまず最初に目に飛び込んで来たのが、正面の壁にある何体もの人形だった。口を開けている様子が、自分に向かって何かを叫ぼうとしているかのように見え、はっきりと言葉にならないが心にずしりと響いてくるものがある。エッチングの作品に描かれている木の枝の一本一本が、とてもソフトなタッチで美しい」と話す。

 期間中、台湾出身のアーティストAmy Changさんの作品「Donated Organ」も同時に展示する。

 開館時間は、月曜~金曜=10時~18時、土曜・日曜=10時~17時。祝日休館。6月1日まで。

Richmond Art Gallery (RAG)

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