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バンクーバーの人類学博物館で震災10周年特別展 「記憶のための未来」 

片桐功敦さん 「Sacrifice 薔薇、コスモス、ひまわり、芙蓉他」撮影地:浪江町請戸 
(写真提供=MOA)

片桐功敦さん 「Sacrifice 薔薇、コスモス、ひまわり、芙蓉他」撮影地:浪江町請戸  (写真提供=MOA)

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 バンクーバーのブリティッシュ・コロンビア大学人類学博物館MOA(6393 NW Marine Drive, Vancouver )で2月11日から東日本大震災後の記憶との向き合い方をテーマとした展示「A Future for Memory: Art and Life After the Great East Japan Earthquake(記憶のための未来-東日本大震災後のアートと暮らし)」が開催される。社会文化人類学者で同館キュレーターの中村冬日さんによる企画展示。

宮城県亘理郡山元町で救済された被災写真 

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 中村さんはタイトルの「記憶と未来」という言葉に込めた思いを、「記憶や思い出は決して過去のものではない。現在生きる私たちにどう影響を与え、そして未来にどのような記憶を残していけるかを考えたかった。震災を過去のものにしたくない、という思いも込められている」と説明。

 「この災害によって私たちは自然と共生する生き方を再考するようになった。また、震災の状況下であっても、人間にはモノを生み出し表現する欲求があり、また同様に自然にも生み出す力があることも知った」とも。

 出展者は岡部昌生さん、港千尋さん、片桐功敦さん、リアス・アーク美術館、Lost & Found Project、「失われた街」模型復元プロジェクト、「3がつ11にちをわすれないためにセンター」、「津波レディース」製作委員会で、アーティスト3名を含むボランティア団体、美術館・博物館・文化施設などとの共同展示。自然が人間に与える脅威と破壊力、そして自然の持つ再生の力を改めて見つめ、災害とその後に芽生えた人々の繋がりなどを、写真やアート作品、ドキュメンタリー映像、被災地から救済されたが画像が大きく破損した写真約5000枚などを通して伝える。

 「展示作品や写真は様々な記憶、感情、そして想像力を呼び起こす。震災のこと、そしてそこから今も続く多くの被災者が生活を立て直す試みを忘れないためにも、記憶を語るモノとして以上の役割がある。繋がりを生み出し次の世代へ繋げていくことで、私たちの記憶に未来はあるのではないか」と記憶とモノの関係を説明。

 「東日本大震災では放射能という目に見えない災害とその恐怖とも向き合うことにもなった。新型コロナと言う目に見えない相手との生活を強いられている現在の私たちにはその恐怖が理解できるのではないだろうか」と現在のパンデミック下という状況と重ね合わせる。

 「どの様な災害も復興への道のりは長く困難だ。芸術には回想し希望を共有する機会を与えてくれ、被災したコミュニティーを活性化する役割がある。人は衣食住があれば生きてゆけるが、こんな時だからこそ芸術や文化の大切さを考える」と芸術の意義も話し、「自然の力はとても強く人の命を奪うこともあるし、自然は新たに生み出す力もある。それは人間にも同じことが言える。災害があってもネガティブなことに目を向けるだけでなく、こういうことがあったからこそ私たちには何を生み出すことができるのか、と考える機会にしてもらえれば」と来館を呼び掛ける。

 開館時間は10時~17時(月曜休館)。事前にサイトから日時指定のチケットの購入が必要。入館料は一般=15カナダドル、シニア(65歳以上)・学生=13カナダドル、博物館メンバー、6歳以下、UBCの学生は無料だがサイトでの日時指定は必要となる。9月5日まで。

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