見る・遊ぶ 学ぶ・知る

「母性」バンクーバー国際映画祭でワールドプレミア 廣木隆一監督と湊かなえさんが登壇

「バンクーバー国際映画祭(VIFF)」で登壇した「母性」の廣木隆一監督と原作者、湊かなえさん

「バンクーバー国際映画祭(VIFF)」で登壇した「母性」の廣木隆一監督と原作者、湊かなえさん

  • 0

  •  

 開催中の「バンクーバー国際映画祭(VIFF)」で10月5日、日本映画「母性」を上映。来加中の廣木隆一監督と原作者湊かなえさんがインタビューに応じた。

「母性」の一場面 

[広告]

 日本での公開前にカナダでワールドプレミアを迎えた同作。廣木監督は「国によって母と娘の立ち位置や、家族の中で誰を立てるかなどの関係は違うかも知れない。その辺りはカナダの方からどの様な反応が出るのかを楽しみにしている」とし、湊さんは「国は違っていても母と娘という関係は共通すると思う。細かいことは違っても子どもを産んだら母としての責任や自覚は周囲から課せられることもあると思う。自分のこととして観てもらえたら」と期待を話した。

 原作が出版されたのは10年前。湊さんは「書いた頃は個人が声を上げにくい時代だった。(母親が)自分に母性がないと感じているなど声に出してはいけない、誰かに相談してはいけない、言ってしまうことによって落伍者と思われるのでは、と悩みを自分の内にかかえていた時代」と話し、「この10年でそれを少しずつ声に上げられる様になってきたし、母親だけが子育ての責任を担わなくても良いという時代になってきている。10年前はまだ新しいテーマだったのが、こういった問題を抱えている人に受けとめてもらえるテーマになったのでは」と今回映画化されたタイミングを喜んだ。「母性が生じるのが当たり前で、生じないのが欠陥ではなく皆で子育てをすれば良い。これが正しい母親の形という枠に押し込められずにいろいろな母親像を描いてみたし、それぞれにいろいろな形があると気付いてもらえればと思っていた」とも。

 監督は撮影で特に時間をかけたシーンを「二人が対峙する場面は何度も撮りなおした。同じ場面なのに(二人の視点から)いろいろなパターンで撮る必要があるのだが役者さんたちも大変だったと思う」と振り返り、「(同じ場面なのに)涙の出る瞬間が違う、髪が少し違うなどの細かい点が合わないとやばい、となったり」と笑いながらも「2人の呼吸感がすごくよかったので」とその仕上がりに笑顔を見せた。

 監督が「撮影に使わせて頂いた日本家屋が、離れと大きな木があり手入れされた庭と作品にぴったりで」と話すと、湊さんも「監督は本当に美しい色で各シーンを撮られている。農家の嫁という過酷な環境のシーンでも日本の美しさ、残されている日本の良さも感じられるシーンが多かった」と映像化された作品の感想を話した。

 上映後は会場にも登壇し喝采を浴びた監督と湊さん。廣木監督は「母と娘の在り方はたくさんあり正解はない。(観た人には)そこに疑問を持ってもらえると嬉しい。自分なら母親と娘のどちらを助けるか、なども考えてもらえれば」と呼び掛け、湊さんは「監督はひとつの物語の中に複数の視点が存在する物語を取るのがとても上手な方」と称賛し、「私の小説は視点が変わると違って見えてくることを書くことが多い。今回の映画でもルミ子(母親)と清佳(娘)の視点で見るとこんなに違うというのが、廣木監督ではないとできなかったと思う」と映画化を廣木監督が手がけたことに喜びを表した。

 「母性」は10月7日にもThe Cinematheque (1131 Howe St. Vancouver)で上映予定(21時15分開始)。

エリア一覧
北海道・東北
関東
東京23区
東京・多摩
中部
近畿
中国・四国
九州
海外
セレクト
動画ニュース