見る・遊ぶ 学ぶ・知る

バンクーバー映画祭でアジア系男子高校生のセクシュアリティを描く青春物語、話題に

「Golden Delicious」(ジェイソン・カルマン監督)の一場面(写真提供=VIFF)

「Golden Delicious」(ジェイソン・カルマン監督)の一場面(写真提供=VIFF)

  • 2

  •  

 開催中のバンクーバー国際映画祭(VIFF)で男子高校生がセクシュアリティを自覚してゆく過程を描いた青春物語「Golden Delicious」(ジェイソン・カルマン監督)が上映された。

[広告]

 地元出身のカルマン監督が描く物語の舞台はイーストバンクーバー。主人公のジェイクは、祖父母の代からの中華料理店を切り盛りするのに忙しい両親を持つアジア系男子高校生。周囲公認のガールフレンドもおり、バスケットボールチームの選手選考に向けて父親と練習を重ねている。ストーリーはジェイクが父親からの期待、ガールフレンドとの関係、進路などに悩みながらゲイであることに気づき、自覚してゆく過程の葛藤と周囲の人との関わりを、バスケットボールチーム、パーティー、SNSへの投稿など普通の高校生の日常のなかで描いてゆく。

 今回のバンクーバー国際映画祭でプレミア上映となった同作。カルマン監督はこれまでの過程を「長かった」と振り返る。「ゴーマン・リーさんの脚本に出会い最初に映画化しようと考えたのが2013年」。以来、制作資金の助成プログラムに数回応募するも選出されず、2020年にようやく他のアジア系映画とともにTelefilm Canada の助成金を獲得したことで完成を迎えた。「近年、社会の多様性への考え方が少しずつ変わってきたというのもやっとこの様な作品が受け入れられた理由にあるのでは」。

 90年代にゲイのアジア系ティーンとして育った監督は「身近にロールモデルを見いだせなかった」と話す。「移民の両親はレストランの仕事で忙しく、息子には成功してお金をたくさん稼いで欲しいというアジア系の親らしい希望はあったが、ゲイに関しては知識もなく息子は幸せになれるのか、と不安に思っていたようだ」とも。「当時はゲイを描いた映画も白人が登場人物で悲劇的な物語が多かったので、自分が投影できる様なアジア人が出てくるストーリーで幸せな映画を探していた。両親に自分は大丈夫だ、と伝えたかった」と話す。

 「ポジティブな元気が出るような話にしたかった」と作品には家族の繋がりや友情を軸に心暖まるシーンも多い。「さまざまなネガティブな考えが周囲にあふれているが、観た人には家族、社会に許しや幸せがあるという希望を感じてほしい」とエンディングに込めた思いも話す。

 監督は「アジア系の家庭では男子にかかる期待は大きく、ゲイであることを打ち明けるのを難しいと感じる人は多い」とし、「映画を観た人には、誰を愛しても恥ずかしく思わなくて良いということを伝えたい。そして自分自身とあなたのバックグラウンドや文化が素晴らしいあなたを作っていると知ってほしい」とも。

 「Golden Delicious 」は10月9日(12時15分開始)にThe Rio Theatre (1660 East Broadway, Vancouver )で2回目を上映する。

エリア一覧
北海道・東北
関東
東京23区
東京・多摩
中部
近畿
中国・四国
九州
海外
セレクト
動画ニュース