日系人強制収容所が舞台の自主制作映画「Henry’s Glasses」がクランクアップ

日系人収容所をテーマとした映画「ヘンリーの眼鏡」のBrendan Uegama監督(後列中央)と出演者たち。

日系人収容所をテーマとした映画「ヘンリーの眼鏡」のBrendan Uegama監督(後列中央)と出演者たち。

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 バンクーバーで製作中の日系人強制収容所を舞台にした自主制作映画「Henry’s Glasses (ヘンリーの眼鏡)」(Brendan Uegama 監督)の撮影が10月6日、クランクアップした。

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 同作品は第2次世界大戦中、BC(ブリティッシュ・コロンビア)州のTashme(現在のサンシャイン・バレー)に実在した日系人強制収容所跡地にほど近い場所で撮影。撮影に使用した収容所建物は、残された写真資料や生存者の記憶を手がかりに再現したもの。跡地から掘り出された窓枠やドア、木材などを各所に使用しリアリティーを持たせた。

 ストーリーは、父親と離され母親と妹たちと収容所暮らしをする少年Henryと、心を閉ざしている年老いた日系人男性Mr.Yamamotoの心の交流を中心に、辛い生活の中でも美しいものを見出すことを大切に生きる家族の姿を描く。Uegama監督が執筆の脚本はDirectors Guild of Canadaによる有望な新人監督をサポートするKick Start Programの対象作品に選ばれた。Uegama監督は「学校の歴史で日系人収容所について習ったことはなかった。この映画を作ることで多くの人が収容所について知るきっかけになれば」と話す。

 出演はバンクーバーエリアから公募しオーディションを実施して選んだ日系人俳優たち。主演は野村Mathew脩弥(しゅうや)さん(12)。小雪の舞う日もある寒さの中、無事全シーンの撮影を終えた野村さん他キャストたちはスタッフから大きな拍手を受けた。収容所で幼少時を過ごした経験を持つUegama監督の父Walterさんもオーディションを受けMr.Yamamoto役で出演している。

 約50人の撮影スタッフのうち、多くがボランティアとして参加協力。収容所内で生まれたという女性をはじめ、エキストラとして多くの地元日系人も参加した。バンクーバーから駆け付けた参加者は「当時は家の中までつららが下がったと聞き驚いた。歴史的に意義のある内容だが、ストーリーは温かなものなので、出来上がりが楽しみ」と話す。

 撮影に際し、Uegama監督は「撮影に心良く協力してくれた収容所跡地一帯の現在の地主Ryanさんに大変感謝している。いずれ歴史博物館にしなければ、と跡地からさまざまな物を堀り起こし保存していた彼の存在がこの映画に与えた影響は大変大きい」と話す。「収容所経験者たちの高齢化が進む中、この映画を少しでも早く完成させて多くの人に見てもらい、収容所の歴史の風化を防ぎたい」とも。

 同作品は今後、コンピューター・グラフィックスなどを加えた編集作業を行い12月末ごろの完成を目指す。その後、カンヌ国際映画祭など国内外各映画祭への出品を予定している。

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