「第30回バンクーバー国際映画祭」で10月6日、アジア部門の新人監督作品に贈られる「ドラゴン&タイガー賞」授賞式が行われ、チベット人のSonthar Gyal監督作品「The Sun-Beaten Path」が大賞を受賞、永野義弘監督の「Recreation」とフィリピン人のEduardo RoyJr.監督の「Baby Factory」が特別賞を受賞した。
大賞を受賞した「The Sun-Beaten Path」はチベット人の主人公が、罪と苦悩を抱えながら旅を続け、精神的な救いを見いだすロードムービー。審査員のひとりSimon Fieldさんは「映画としての質が素晴らしく、たった一つの顔と場所から、感情の入り組んだ感動的な話を伝える能力を高く評価した。個性あるキャラクター設定とチベット文化の的確な引用にも感心した。新しい民族映画の力強い声を伝えている」と受賞の理由を話す。
Sonthar Gyal監督は「これは救済の物語。チベットを舞台にしているが全ての人に当てはまり共感してもらえると思う。25日間で撮った映画がこのような大きな賞をもらい驚くとともに感謝している」と話す。
特別賞(Special Mentions)に輝いた「Recreation」について、審査員のAnn Huiさんは「暴力的な少年犯罪を扱っている映画。その不安と入り交じるアンニュイで個性的な雰囲気と登場人物の見事な対話を評価した。奇妙なことだが、残酷さや絶望的な物語でありながら、この映画は登場人物への同情を保ち続けてもいた」と評した。永野監督は「受賞は本当に驚いたしうれしい。どれくらいすごいことなのか、いまだきちんと実感できていないくらい」と喜びを語った。
惜しくも受賞は逃したが、飯塚花笑監督作品の「僕らの未来(英語題「Our Future」)もノミネートされていた。
受賞式後、石井裕也監督の「ハラがコレなんで」が上映された。来加中の石井監督は「4年前を思い出して受賞式中は緊張していた。この映画を観客と一緒に見るのは初めてなので自分も楽しみにしている」とあいさつ。映画祭アジア作品プログラマーのTony Raynsさんは「大学の卒業制作で当映画祭に参加してくれた石井さんが、今では素晴らしい日本の若手監督に成長して戻って来てくれ、われわれも大変うれしい」と歓迎の意を表した。
大賞受賞作の「The Sun-Beaten Path」は8日16時から、Vancity Theatreで再上映される。