バンクーバーのプロ野球マイナーリーグチーム「カナディアンズ(Vancouver Canadians)」の試合で8月15日、「バンクーバー朝日」OBのケイ・上西さんが始球式に登板。92歳という年齢を感じさせない一投に球場内から大きな拍手が起こった。
朝日選手の絵を描いたアーティストEttingerさん(前列左端)とご家族に囲まれるバ ンクーバー朝日チームOBの上西さん(前列右端)
バンクーバー朝日は第2次世界大戦開始前に活躍した日系人による野球チーム。人種差別や偏見にも負けずにフェアプレーを貫き、日系人だけでなく白人からも多くの応援を受けていた。開戦に伴い日系人は強制収容所に送られたためチームは消滅したが、近年、再評価が高まり2003年にはカナダ野球殿堂入りし、2005年にはBC州スポーツ殿堂入りも果たしている。
上西さんは「(始球式で投げることを)とても光栄に思っている」とし、「ボールを投げるのは久しぶりだが楽しみたい」と投球に臨んだ。92歳という年齢を感じさせない健康の秘訣(ひけつ)は「膝を少し痛めているが週2回はバドミントンを楽しんでいる」と話す。12月には日本で映画「バンクーバーの朝日」(石井裕也監督)が公開されるが「多くの人が朝日を覚えてくれており、本当にありがたいと思っている。自分も撮影に協力したし、映画は家族とも楽しみにしている」と笑顔で話した。
当日はカナディアンズのホームグラウンド、「Nat Bailey Stadium」外壁に朝日を題材としたジークレープリントが設置されたばかりのアーティスト、Jennifer Ettingerさんも来場。「朝日が得意としたバントをしている選手の力強さを表現する赤を使い描いた」と説明し、92歳の上西さんのピッチングに「素晴らしい」と拍手を送った。