障害を乗り越え、10キロランに参加-千羽鶴を掲げ、「何でもできる」

Ryan Jeklinさんとインターヴィーナーを務める中川美佳さん。折鶴を手にバンクーバー・サン・ランに挑戦する。

Ryan Jeklinさんとインターヴィーナーを務める中川美佳さん。折鶴を手にバンクーバー・サン・ランに挑戦する。

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 バンクーバーで4月20日、カナダ最大規模の10キロラン「The Vancouver Sun Run」が開催される。今年は5万4千人が参加する見込み。

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 同イベント参加予定者の1人、Ryan Jeklinさんはリッチモンド在住。先天性のDeafblind(盲ろう者、視聴覚二重障害者)で、同様の障害を持つ人たちと一緒にグループホームで生活しており、今回ホームの仲間とスタッフのチームで10キロコースを走る。

 参加するにあたり、Ryanさんは2007年8月から折り続けてきた千羽鶴の一部を掲げ、チームメートはネックレスやピアスとして折り鶴を身に着けるという。

 折り鶴を作り始めたきっかけは、日ごろRyanさんのintervenor(インターヴィーナー=盲ろう者のガイディング、手話などでの通訳を通して自立を促す役割の人)を務める中川美佳さんとの点字学習だった。毎回点字の勉強が終わったら折り紙を教えることを約束したところ、Ryanさんのモチベーションが向上したため、中川さんは、各ステップごとの折り方が手で触れてよく分かるように示した本を独自に作成。最初のうちは一緒に教えながら折っていたが、「何度か繰り返すうちに、何も手伝わなくても最後まで1人で作り上げるようになり、覚えの良さに驚いた」(中川さん)という。

 中川さんは、アルバータ州の「Medicine Hat College Deaf and Blind Support Services Program」を2007年4月に卒業後、同年6月からRyanさんの担当としてグループホームで働き始めた。「Do With, Not For」をモットーとしてRyanさんと接しながら、「代わりにしてあげる(=介護)」ではなく、「対等の立場で理解し合えるようにする」ために、日常生活での自立をサポートしている。

 「彼と一緒に過ごしていると、『どんな障害を抱えていても不可能なことは何もない』ということを改めて思い知らされる。 自分の国の伝承文化である折り紙を、カナダで障害を持ちながらも精いっぱい頑張る人に伝えることができて、とてもうれしい。折り鶴をチームのシンボルにしてバンクーバーの街を走ることで、まだまだ認知度の低いDeafblindやintervenorという職業の存在を知ってもらい、『やる気さえあれば誰もがどんなことでもやり遂げることができる』ということを伝えたい」と話す中川さん。「今回の経験で、『平成版サリバン先生になる』という自分の目標に少しでも近づけたら」と笑顔で抱負を語る。

 Ryanさんは、Deafblindのほかに知的発達障害も持つが、積極的に外に出て社会生活を送っており、新聞配達やスーパーマーケットでの商品陳列などの仕事、ボランティアなどをこなすほか、陸上競技やスノーシューイングなど計5種目でスペシャルオリンピックス(知的発達障害のある人たちの競技会)に参加している。Sun Runにも毎年参加しており、「今回もとても楽しみな様子で、開催日までを毎日指折り数えている」(中川さん)という。

 今回作り上げた千羽鶴は、6月22日からの「Deafblind Awareness Week」期間中のイベントでオークションに出品予定。

Vancouver Sun RunDeafblind Awareness Week BC

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