バンクーバーのロジャースアリーナ(800 Griffiths Way, Vancouver)で3月11日に行われたジャスティン・ビーバーさんの「Purpose Tour(パーパスツアー)」バンクーバー公演に、唯一の日本人バックダンサー、Yusuke Nakaiさんが出演した。
ジャスティン・ビーバーさんのバックで踊るNakai Yusukeさん(一番左)
アッシャーさん、ジャスティンさんら有名アーティストと世界中を回り活躍するNakaiさんは広島県の出身。大学卒業後、就職はせずダンスの道に進むことを決意し2011年に渡米した。上京することも考えたが「どうせならアメリカで勝負してみたかった」といい、単身でコネもなく「ロスの空港に降り立ち、さてどうしようと考えるところから始めた」と当時を振り返る。
渡米後2カ月ほどで大手エージェントのオーディションに合格。1年半かかったビザ取得後にはすぐNe-Yoさんのミュージックビデオへの出演が決まりツアーに帯同。その後は高校生のころから憧れていたアッシャーさんやテイラー・スイフトさんらとも共演し、今回はジャスティン・ビーバーさんのツアーに参加と、順調にダンサーとしてのキャリアを築いている。Nakaiさんは「仕事で出会った振付師の方たちによくしてもらい次の仕事につながっていった。良い出会いには本当に感謝している」と話す。
世界中から多くのトップレベルのダンサーが集まる厳しい環境の中で活躍し続けられる理由について、「自分はスキルだけでなく人を引き付ける魅力を持ったダンサーであろうと心掛けている。(採用してくれる人たちも)踊っている人間の魅力を感じて伸ばそうと思ってくれるのでは」と分析する。
渡米当初、「2年で芽が出なければ日本に帰るつもりだった」といい、限られた期限の中で「うまくなって人を引き付ける」ために独自の練習法を開発。「とにかく体の全ての部分を意識してコントロールできれば、どんなダンスも踊れる」と指先から足のつま先、片目の動きまで全ての筋肉を柔らかくし動かせるよう鍛錬した。ダンサーとして活躍する今も「もっとうまくなりたい」と、日々12時間以上同練習法を継続している。華やかなキャリアの裏でストイックに努力を続ける人柄の半面、英語に関しては「いまだに全然駄目で、英語ができないキャラで生きている」と笑い飛ばす一面も。
今回の「Purpose」ツアーではジャスティンさんが下がっている曲間、3分ほど1人で踊るソロパートも担当。広いステージで繰り広げられるNakaiさんのダンスは、激しくも流れるような動きで会場の注目と歓声を一身に集めた。「ツアー初日の開始前に突然ソロで自由に踊ってと言われた。今までに経験のないことだったので本当に驚いたが、とても楽しく踊れた」と笑顔で大役を務めた感想を話す。「この瞬間があるから、頑張ってきて良かったと思える」とも。
同様にダンスの道を目指す人には「おいしい物をたくさん取って」とアドバイス。「食べ物という意味ではなく自分への栄養という意味で、本物のステージなど素晴らしいものをたくさん自分の目で見て感じて吸収してほしい」と力を込める。
現在は体調を維持してツアーを完走することに集中している。世界中どこに行っても注目を集めるジャスティンさんを「天才でとても純粋な人」と評するNakaiさん。「素晴らしい天才たちと仕事ができる今の環境に感謝して、ダンサーとしてこれからも向上していきたい」と意気込む。
「Purpose Tour」は7月までカナダを含む北米各地で公演し、その後ヨーロッパ各地を回る。Nakaiさんは公演の合間の5月に日本へ一時帰国し、ダンスワークショップの開催も予定している。