バンクーバーで10月1日から開催されている「第28回バンクーバー国際映画祭（Vancouver International Film Festival）」で邦画「イエローキッド」が上映され、真利子哲也監督も来加し質疑応答に応じた。

　同作品は東京藝術大学大学院映像研究科修了制作作品として今年製作された作品。主演に遠藤要、岩瀬亮を迎え撮影された。真利子監督は芸大入学前より短編映画で「ゆうばり国際映画祭」2年連続グランプリ受賞、ドイツ・オーバーハウゼン国際映画祭で映画祭賞を受賞している。芸大入学の理由として「それまで個人で撮っていたので、違った映画の手法を学びたかった。ドキュメンタリーからフィクションへと映画の方向性を変えてみるためでもあった」と話す。

　ストーリーは祖母と二人で暮らすボクシングジムに通っている男、元ボクシング世界チャンピオン、漫画家の3人の屈折した心情を描く。途中挟み込んだ漫画の世界がナレーターの様に映画のストーリーと同時進行しながら展開。真利子監督は「フィクションの中にフィクションを挟みこむというアイデアが企画当初からあったため、イメージ通りのアメコミ風の絵が描ける漫画家探しと実際に劇中に使う絵の打ち合わせには時間をかけた」という。

作品のテーマとしては「絶対的なものは何もなく、何が正しいというわけでも、何が本当で何かウソということもない。そういう人生の各場面の中で自分が決めるということが一番大事、自分が決めればそれで良いのだ、ということを伝えたかった」と話す。

　同作品は今回の映画祭でアジア部門の新人監督に贈られる「ドラゴン＆タイガー賞」にノミネートされた。惜しくも受賞は逃したが「バンクーバーで外国の監督のいろいろな作品を見ることができ大変刺激になった。韓国や中国の監督と片言の英語だが交流できたのも良かった」と映画祭出品の感想を述べる。次回作は女性を主人公にした作品を準備中。「テレビ風の撮りかたが多くなってきているが、自分は映画らしい映画を極めていきたい」と抱負を語る。