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バンクーバーの日本人教師がカナダ発の教授法伝える 「答えのない教室」出版

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 バンクーバーの公立高校で数学教師を務める梅木卓也さんが2月24日、日本で初の著書「答えのない教室 3人で「考える」算数・数学の授業」(新評論)を有澤和歌子さんとの共同執筆で出版した。

 同書では梅木さんが高校勤務の傍ら修士課程に在籍するサイモン・フレーザー大学教育学部のピーター・リリヤドール教授の研究を元にした「生徒たちが考えやすくなる教え方」と実践方法を解説。算数・数学だけでなく他の教科に応用する方法や梅木さんが実際に行った模擬レッスンの様子なども紹介する。
 
 梅木さんは「教授が提唱する教え方では、教師が例題の解き方を見せ生徒が演習問題を解くというスタイルではなく、出された問題を生徒が3人一組で話し合い、試行錯誤しながら解法を探り答えを見つけていく。一つの式に一つの答えという問題ではなく、無限に考え方と解法がある問題を解く。そこから日本で紹介する際に『答えのない教室』と呼ぶことにした。3人という数字は、リリヤドール教授の研究で、子どもたちが一番活発に考えて意見を出し合う最適な人数という結果から」と話す。

    

 梅木さんが実際に自分のクラスで実践したところ「生徒が考え、間違えながら答えを作って行く過程を教師が伴走することで、子どもの考え方の過程も見える。それを繰り返すと、説き方が分からない、答えが見えない問題を自分で考えて解くことを試してみようという姿勢が見られるようになる」と、その効果を実感したという。「少し問題の方向性が変わるとつまずく子がいる。応用に弱い子がいる。自分で考えず先生の解法のまねをするだけで解けてしまう子など、分かっているふりをしているだけの子がいる。どうすれば生徒が自立して考えていくようになるか、と常々思っていたところこの教授法に出合った」とも。

 「日本でもこの教え方を紹介できればと思っていたところ、日本で教育事業を営む(共著者の)有澤さんと出会い、日本の小中高生や教員向けに模擬授業を行う機会を得た」。世界7カ国語に翻訳されているリリヤドール教授の著著「Building Thinking Classroom in Mathematics 」を日本語に翻訳する道も探していたが、「ただ翻訳するよりも現場で実践している方法を紹介する本にしてはどうか、という話しになり、自分の経験から得た知見を交えた本になった」と出版の経緯を話す。

 3月中旬の勤務校の春休みに合わせて日本に一時帰国、出版記念講演や模擬レッスンなどを行った梅木さん。「模擬レッスンを体験した教育現場にいる人たちにも、このような試行錯誤や会話が起こるという過程と効果を実感してもらえたようだ」と振り返る。著書を通して「考えること、教えることの楽しさを多くの人に知ってもらえれば」と期待する。

 価格は2,420円。

 

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