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エリア特集2009-10-09

ウイスラーへのゲートウエイ、「ウエスト・バンクーバー(West Vancouver)」を知る。

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 ウエスト・バンクーバー(West Vancouver)といえば、海と山のきれいな風光明媚な場所、高額所得者が住むエリア、ウイスラーへの通り道、引退したら住んでみたい場所など、いろいろなイメージがあるが、今回はオリンピック期間に多くの人が通る場所であり、知っているようで知らない場所「ウエスト・バンクーバー (West Vancouver)」について探ってみた。

・・・ウエスト・バンクーバーとは?・・・
 筆者は17年前にウエスト・バンクーバーのMarine Dr.沿いでホームステイをしていたが、当時、海岸沿いに1百万ドル(1ミリオンドル)の家が建てられたことを、昨日のことのように思い出す。高額所得者が住むというイメージよりは菜園など自然が好きな人たちが住む街というイメージが強く、ショッピングエリアはパークロイヤル(Park Royal)ぐらいしかなかった。ショッピングエリアは今でもそれほど多くはないが、そのころに比べて家々が山の丘陵地まで伸び、人口数がかなり増えたようにも思える。そのようなことを背景にウエスト・バンクーバーを拠点に不動産業を営み、20年間、同地に住むブルース横山氏に話を聞いた。

 「ウエスト・バンクーバーは、人口約4万4千人と小さい街で、市の条例で製造業を営むことができないこともあり完全に住宅地と僅かな商店街だけで成り立ち、あとはそれを取り巻く海、山があるのみといった非常に静かな環境で、ドライブして一歩足を踏み入れれば田舎のような落ち着いた雰囲気が漂う街。しかし、その実、『No 1』『Only 1』『First 1』など、特異的なことが多く、非常に恵まれた自治体である」と横山氏は言う。

何が「No.1」なのか。

「住民の平均所得がカナダNo.1。また家の価格もカナダでNo.1(自治体における平均)。他にはWest Vancouver Memorial Library(図書館)での貸出率がカナダでトップ。また自治体が運営するバスはカナダで最も長く運行している(1912年開始)。このバスはカナダで最初に車椅子での搭乗を100パーセント可能にした。このウエスト・バンクーバーを走るブルーバス(Blue Bus)はメトロ・バンクーバー内でも唯一、自治体運営のバスでダウンタウン行きに関しては、トランスリンク(Translink)社と乗り入れ提携をしている」(横山氏)。

 他にも、先述のパークロイヤル(Park Royal shopping centre)は、カナダで最初に建設されたショッピングモールだったことをご存知だろうか?1950年のオープンだった。50年以上、バンクーバーの人に親しまれ、2004年にはパークロイヤルビレッジ(Park Royal Village)が完成した。同ビレッジ内に、ホーム・デポ建設が計画された際、ボックスストアはウエスト・バンクーバーにそぐわないとの反対で最初は否決され、現在あるホームデポは唯一妥協した形。特異なモダンスタイルの店舗として営業することとなった。

またパークロイヤル北側の裏に位置するミレミアム社開発の集合住宅「Evelyne」は、住民の反対で計画が再三、変更され、総個数を当初の予定より大幅に減らしことで建設が許可されたエリアで、予定より実質4年程延期されて許可が下りた。非常に街の景観に厳しい住民が多いようで、そのような住民によって、今もウエスト・バンクーバーのブランドが維持されているといっても過言ではない。

・・・ブリッティシュ・プロパティーとは・・・
 ウエスト・バンクーバーと切っても切り離せない「ブリッティッシュ・プロパティー」。「ブリッティシュ・プロパティー」という言葉はご存知の人も多いと思うが、簡単に言えば、ウエスト・バンクーバーの最も古い超高級住宅街である。歩いてみると確かに大きいお屋敷群が連なっている。このブリッティシュ・プロパティーの歴史を紐解くと選ばれた大富豪が居住していたことがよく分かる。ウエスト・バンクーバーは1912年に市に制定され、当初はフェリーのみでしかダウンタウンに行くことができなかった(現在のMarine Dr.×14th周辺がフェリー乗り場)。

そのような中、1931年にビールで有名なギネスファミリーのブリッティシュ・プロパティー(British Properties)社が、ウエスト・バンクーバーの山の開発許可権を取得する交換条件として、橋(現在のライオンズゲートブリッジ)の架設とゴルフ場建設を行うことをウエスト・バンクーバー市と同意し、現在の姿となった。この時、1区画0.5 エーカー(約600 坪)で売り出され、当時7,500ドルで購入された土地が、70 年後の現在、古い家のままで(土地だけの評価で)120 万ドル(1.2 ミリオンドル)~150 万ドル(1,5 ミリオンドル)と約200 倍で売買された例もあり、インフレ率などを鑑みても金額上昇率はまさにロケット級である。その7年後、1938年にライオンズ・ゲート・ブリッジ(Lions Gate Bridge*別名First Narrows Bridge)が完成。当時の所有権はブリッティシュ・プロパティー社にあったが1955年にBC州に売却することとなった。余談だが、1986年のバンクーバー万博(Expo86 Vancouver)の際に、今でも夜間常時目を引く、橋のライトアップが始まったようだ。
 さてこのように形成された「ブリッティッシュ・プロパティー」だが、当初は特定の人しか購入できない決まりになっていたが、アジア人、アフリカ人、アラブ人などのオリエンタルな人種は購入することはできなかった。実際にそれは分譲に当たっての禁止条項に書かれており、人種差別が問題視されてから、それらの項目を削除するという一文が加わったようだ。「富豪の人が現在も不動産を購入して住んでいるが、昔のブリッティッシュ・プロパティー所有者は、召使、ガーデナー、運転手などを雇用し、庭や家の手入れを行き届かせるぐらい大富豪の人々が居住していた。今はそこまでの人々も減り、大敷地の手入れを嫌がる人々がAmblesideやDundaraveといった海沿いの小さな家に移る例もある。家の価格は高額には違いないが、2百万ドル(2ミリオンドル)~6百万ドル(6ミリオンドル)で、実際には、28th St以西の、森の中やWater frontに建つ邸宅には、1 千万ドル(10 ミリオンドル)以上の家も少なくなく、そのエリア(森に囲まれた西の方の地区)こそが、が真のウエスト・バンクーバーだ、と唱える人もいる」と横山氏は話す。

その後、ブリティッシュ・プロパティー社は、Chartwellエリア、Westhillエリアと西に拡張し、昔ほどのブランド力はなくなりつつあるようだが、未だに富豪が住んでいることは間違いない。(今後、ダウンタウンを一望できるウエスト・バンクーバーの斜面は、すべて住宅地になる予定:横山氏談)
・・・ウエスト・バンクーバーの居住者・・・
 リッチなイメージのウエスト・バンクーバーだが、実際にはどんな人が住んでいるのだろうか?ウエスト・バンクーバー市、2006年の国勢調査によると下記のような人々がウエスト・バンクーバーに住んでいることがわかる。ウエスト・バンクーバーの23パーセント(約4分の1)は65歳以上の人が占める。80歳以上に至っては、2001年から2006年にかけて約20パーセント増加するなど、最も大きい増加率になっている。このシニア層の約3分の1(29パーセント)は一人暮らしというデータもある。高齢者が多いという結果だ。ただ最も多い層は裕福な中年層で、約4割になり、カナダ内外からの移住者も多い。

また15歳~19歳の若者も多く、全体の7.8パーセントを占め、メトロ・バンクーバー全体の6.5パーセントより高い値を示す。20歳~29歳は、8.3パーセントと、メトロ・バンクーバー全体の13.8パーセントより低く、この層は両親と一緒に住んでいるようで、家の価格が高いウエスト・バンクーバーということであれば頷ける。15歳~24歳で区切ると、93パーセントは親と同居、メトロ・バンクーバー全体の79パーセントと比較しても高い値である。0歳~9歳の子供は7.9パーセントとメトロ・バンクーバー全体の10.3パーセントより低いが、これは20歳~29歳のヤングアダルトと呼ばれる層が少なく、住居費が高いからだと、市は定義づけている。また家族構成では、57パーセントが結婚しており、独身者は43パーセントになる。

また民族的な違いについて調べてみたが、実際、visible minoritiesと呼ばれる層は全体の23パーセントで、残りの77パーセントは白人系になる。そのマイノリティーグループの詳細は、中国系35パーセント、西アジア系25パーセント、韓国系11パーセントとなっている。またウエスト・バンクーバーの28パーセントは、第1言語が英語ではなく、多い順にペルシア語、続いて中国語(マンダリン、カントニーズ)、ドイツ語となり、2001年の中国語、ペルシア語、ドイツ語と比較すると、ペルシア系の移民が増えたことが分かる。
・・・教育の盛んなエリア、ウエスト・バンクーバー・・・
 このようにシニア層が多く、あまり人口も増加していないように思えるウエスト・バンクーバーだが、昔から教育に熱心な家庭が多く、また学校も教育にかなり力を入れていて、教育レベルは非常に高い。ノース・バンクーバーやダウンタウンからウエスト・バンクーバーの小・中学校に通う子どもも多いことから、ウエスト・バンクーバーを本拠地に主に子供留学を手掛けるフューチャー教育研究所の藤原氏に話しを聞いた。

 「ウエスト・バンクーバーが最も教育レベルが高く、教育熱心と言われる所以は、安全で裕福な家庭が多いからで、お金に余裕がある人は一般的に教育にも熱心である」。実際に平均所得がメトロ・バンクーバー全体でNo.1であり(2001年データで、$120,060。メトロ・バンクーバー平均の2倍)、平均土地価格もNo.1であるウエスト・バンクーバーに住む人々はお金に余裕のある人たちであろう。

藤原氏は、日本からの親子留学を数多く手掛けてきて、その中でもウエスト・バンクーバーの学校を勧める理由は「もちろんウエスト・バンクーバーに住んでいるということもあるが、安全で、教育レベルが高いというだけでなく、どこの学校もアットホームな環境。子供たちが自然に育っていく環境が整っていることから最もお勧めする」と藤原氏は話す。実際にFSA(Education’s Foundation Skills Assessment)テストでは、Grade4,7,10で、過去5年間、最も高い成績を残しているのがウエスト・バンクーバーの生徒たちである。また高校卒業率は90パーセント以上とBC州内で最も高く、大学(University or College)進学率は80パーセント以上で、その内UBCに入学できる率は65パーセントという結果もあるようだ。

 上記のような教育を司るウエスト・バンクーバー教育委員会(West Vancouver School Board)は、世界中から来る子どもたちの受け入れ体制をいち早く強化し、実際に数多くの子どもたちを受け入れてきている。現在も日本を含めて数多くの国でプロモーションを行っているウエスト・バンクーバー教育委員会のDr. ROD MATHESON氏は、「カナダの公立学校に海外の子どもたちを受け入れるインターナショナル・プログラムは、1982年にウエスト・バンクーバー教育委員会がカナダで最も早く実施した。海外の生徒を受け入れ始めたのは、基本的に白人(Caucasian)が多い環境の中で、もっとさまざまな文化を取り入れ、多様性のあるコミュニティにする必要があるということが主な理由。その結果、今から15年前には6,800人の生徒中、インターナショナル・ステューデント(International Student)は200人を占め、今では7,000人の生徒の内、600人がインターナショナル・ステューデントを占めるまでになった。もしこのプログラムを始めていなければ、単純に生徒数が6,600人、6,400人と減少していたであろう。数が減れば必然的にBC州からの財源も減る」と話す。ウエスト・バンクーバーも少子化の波にあるようで、カナダ国が海外からの移住者を促進するように、海外からの留学生を増やしていかないと学校経営が成り立たない現状があるようだ。

ROD氏は、他に収入(Revenue)部分についてこう指摘する。「ESLなどを含めて、学校経営にはお金がかかる。インターナショナル・プログラムはその面にも貢献している」と。

現在、BC州からの教育財源は年間49百万ドル(49ミリオンドル)で、1生徒当たりの州政府の補助金はBC州の中でウエスト・バンクーバーが最も少なく、これで学校経営を行うことは非常に厳しい。そんな中、このインターナショナル・プログラムは全体の2割弱、約8百万ドル(8ミリオンドル)以上を稼ぎ出すまでに至っている。他にも、5年前に越境して他のエリアの公立学校に通学することが可能になり、ダウンタウンやノース・バンクーバーなどから600人の生徒がウエスト・バンクーバーに通っている。インターナショナル・ステューデント600人、越境生徒の計1,200人が、全体の7,000人の中に含まれており、このような受け入れ施策のお陰で現在も上手く学校経営ができているようだ。

 インターナショナル・ステューデントの国籍は「約15年前はカナダ全体で日本人の生徒が最も多かったが、10年前は韓国人、2~3年前からは中国人が最も多くなった。ウエスト・バンクーバーについては、15年前は日本、韓国、香港、台湾の4カ国が中心であったが、今では、韓国が約120人前後と一番多く、次に中国、ドイツと続き、ブラジル、日本がほぼ同じ35人前後で、他に、台湾、イタリア、タイ、トルコ、チェコ、コロンビア、ロシア、カザフスタン、ペルー、ナイジェリア、インドネシア、マレーシアと約20カ国から生徒が来るようになり、インターナショナル・プログラムもかなり大きくなった」とROD氏。

 最後に、ROD氏は、ウエスト・バンクーバーの教育力の高さについて、「教師の資格もカリキュラムもBC州すべて同じである。であれば、何故、ウエスト・バンクーバーの教育力が高いのか?それは教育に熱心な保護者が多く、日々先生や学校に提言をし、ウエスト・バンクーバーの教育に熱い視線を投げかけているからである。そのような保護者の期待に応えられるように学校も教師も教育委員会も日夜努力をしている」と話す。
・・・店舗の声・・・・・
 13年前からウエスト・バンクーバーのオーナーシェフとして、寿司屋を営むNishiki Sushiの松岡治男氏はウエスト・バンクーバーについて「ウエスト・バンクーバーは昔から高級住宅街で、お金に余裕のあるお客が多く、トラブルがほとんどなかった。ただお金持ちのせいか、クオリティーにこだわる人は多い」。お客の8割は白人だという。また環境について、「ウエスト・バンクーバーは、ビーチ、海、スタンレーパークや多くの公園、また車で30分でスキー場に行くことができるといったように、自然の宝庫であり、Amblesideあたりは暖かく、ダウンタウンより雪も少ない」と話す。確かに1階の店舗から、ビーチの景色が見られる店舗は、そう多くはない。またウエスト・バンクーバーといえば、Park Royalをイメージされやすいが、行政などの中心はAmblesideエリアで、実際にウエスト・バンクーバー市がAmblesideを再開発する話しもあるという。

 「Amblesideを含むウエスト・バンクーバーはのんびり過ごすにはとてもいい場所。海岸線に続くSea Wall(遊歩道)や、犬を放し飼いにできるDogパークなどで過ごすのも楽しい。またパーキングは1時間~2時間ほぼ無料で駐車でき、18時以降は無料となる。ホテルはあまり多くはないが、ノース・バンクーバーのホテルやダウンタウンのホテルに滞在して、ここまで車で10分もかからない」と、松岡氏はウエスト・バンクーバーの楽しみ方を話す。1日のんびり過ごす観光場所としても、ウエスト・バンクーバーを意識してみるのもいいだろう。
・・・・今後のウエスト・バンクーバーへの期待・・・・
 今年3月に、コミュニティセンターに付随する形で、旧来のアクアティックセンター(プール)が、とてもきれいな施設に蘇った。このウエスト・バンクーバーの公営プールは、塩素を使わないで水を浄化するという最新技術を採用。カナダだけでなく、世界的にも最新鋭のテクノロジーが使用されている。このプールに1回数ドル前後で入ることができる。他にも先述の15ブロックほどの長さのあるSea Wall遊歩道や、数多くの公園、スキー場、ゴルフ場と、充実した公営の施設が多く、住民に対してよりよいサービスを提供できるのは、Property Taxを基本とした多額の税金のお陰であることはいうまでもない。

土地が高く、安全で、教育環境のいい場所に誰もが住みたい。ただ開発にも限りがあり、空いている空間に住めるには、資産家や高額所得者といったお金にゆとりのある層となってしまい、一般の人が住むには高嶺の花である。ただそのようなウエスト・バンクーバーではあるが、公共施設を利用することは誰もができる。まずは公園やプールといったところからウエスト・バンクーバーを体験してみるのもいいだろう。またウイスラーに行く途中に、自然観賞やショッピングに立ち寄ってみるのもいい思い出になるだろう。

<ウエスト・バンクーバー特集での取材先>

ブルース 横山氏
カナダ大手の不動産会社Sutton Groupウエスト・バンクーバー事務所に属し、20年以上不動産業を営む。自身も、20年以上、ウエスト・バンクーバーの住民だったが、最近、ダウンタウンに居を移した。

藤原 美信氏
フューチャーグローブ教育研究所代表
小中高生正規留学、短期留学、親子留学、大人留学、団体語学研修企画、現地サポート。 1994年よりウエストバンクーバー在住。

Dr. ROD MATHESON
ウエスト・バンクーバーのインターナショナルプログラム責任者として、世界中を飛び回る生活。日本では、仙台を中心に、名古屋、大阪、福岡と何度も仕事で行き来する。CAPS-I(Canadian Association of Public Schools – International-56校の公立学校から成るNPO組織)のBC州理事も兼任する。

松岡 治男氏
「誰でも気軽に入れるようなお店」をコンセプトに営業。店内はジャズが流れ、ゆっくりくつろげるような空間を演出。100種類を超えるバラエティーに富んだメニューが自慢のお店。


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