バンクーバー国際映画祭で最新作「ハラがコレなんで」(英題「Mitsuko Delivers」)が上映された石井裕也監督が最新作についてのインタビューに応じた。
今回ドラゴン&タイガー賞の受賞式でも上映された「ハラがコレなんで」は仲里依紗さん主演の人情コメディー。仲さん演じる光子が恋人に捨てられ、臨月の体で幼少時に住んだ長屋に帰ってくる事から繰り広げられる、長屋の住人たちとの交流劇。共演は石橋凌さん、中村蒼さん、稲川実代子さんら。
同作では「粋」という言葉が多く使われおり、「粋」で面倒見の良い登場人物が多く登場する。石井監督は「今の日本に必要と思える人間、この時代に居てほしい人間、こういう人間でいたいという(自分の)姿勢などを反映させたら、こういう登場人物になった」と説明。一昔前に戻ったかのような長屋で、人々が家族のように暮らすという設定は「昔はよかったね、と言うつもりはない。これからどうするか、に主眼を置いてはいるが、あの場所を使うことで時代に取り残された人々の優しさやいとおしさも描けたと思う」。
光子の口ぐせ「オーケー」については、「石橋凌さんがよく、『オーケー』とか英語を挟んだ話し方をする。昔のロッカーのような、少しダサくてかっこいい話し方が好きでせりふに使った」と笑顔で打ち明ける。個性あふれる役者陣への演技指導は「せりふの言い方から間の取り方まで、重要なことなので、かなり細かくお願いした」と話す。
2007年のバンクーバー国際映画祭では大阪芸術大学の卒業制作「剥き出しにっぽん」がドラゴン&タイガー賞にノミネートされた。4年ぶりのバンクーバーについて「今年の受賞式に同席したのだが、当時の緊張感や賞が取れなくて悔しかったことなどを思い出して少し切なかった。前回も感じたが観客の反応はとてもよく、こちらが驚くほどよく笑ってくれて素直にうれしかった」とも。
英題の「Mitsuko Delivers 」は昨年の映画祭で上映の「川の底からこんにちは」(英題「Sawako Decides」)と同様に、同映画祭アジア部門プログラマーのTony Raynsさんが命名。「日本の映画にも詳しいし、とても信頼しているので今年の英題もお願いしたが、最初に提案されたのが『Mitsuko Decides』だった。これはさすがに変更をお願いした」と笑顔で裏話も披露した。同作をこれから見る人には「感覚的な映画なので、その人なりの解釈を自由にしてもらえれば」。