バンクーバー国際映画祭で日本人監督、嶺豪一監督の作品が2本立てで上映された。
今回上映されたのは昨年制作した短編「よもすがら」と、今年、多摩美術大学の卒業制作として撮影した長編「故郷の詩」の2作。2作とも別の人物ではあるが同じ名前を持つ主人公「大吉」が、日常生活の諸問題に対処しながら生きながらも簡単にはかないそうもない夢を追い掛ける姿を描く。
嶺監督は「『よもすがら』は戦後間もない日本が舞台なので、使用期限が切れた16ミリのテープを使って撮影してみたところ、雰囲気も出てうまく仕上がった。未熟なところもある短編だが、テーマが『故郷の詩』と同じということで、2本立てとして上映してもらったようだ。自分の作品をより多く知ってもらう機会になり光栄に思っている」と話す。
「故郷の詩」は、嶺監督が大学在学中に4年間暮らした熊本県出身者用の男子寮「有斐学舎」が舞台。故郷を離れ東京で暮らす同郷の若者たちの寮生活をリアルに描く。スタントマン志望の大吉と映画監督を目指す天志が卒業を目前に焦りを感じながら、なんとか映画を完成させようとする様子を軸に、大吉の失恋話や寮の宴会の様子なども交えストーリーは展開する。
主演の大吉を自ら演じ、撮影も寮の自らの部屋を使った監督は「『故郷の詩』は卒業制作ということで本気で作った。体を張るシーンが多く、危険も多かったので俳優には頼まず自分で演じようと決めた。実際けんかのシーンでは歯が頬の内側に貫通したり、水に漬かるシーンでは身動きが取れずかなり苦しんだりもしたが、今では懐かしく思っている」と振り返る。
「男くさいばかなことばかりやっている映画。卒業祭りの宴会シーンや酔って吐くシーンなど演技でないものも多く入っている。寮の中という小さい世界で生きている若者の世界を多くの人に見てもらい、楽しんでもらえたらそれでいい」とも。
バンクーバー国際映画祭には、俳優、音楽担当のバンドSPANGLEのメンバーなどを伴い8人で参加。「以前先輩の作品を手伝った際に海外の映画祭などに同行させてもらった。今回は自分の監督作品で多くの仲間と海外に来られてうれしい。他の映画関係者とも交流を持てたし、今後の励みになった」と感想を話す。