バンクーバー国際映画祭で、日本育ちの米国人監督リンダ・ホーグランドさんがメガホンを取った原爆遺品写真展を題材にしたドキュメンタリー映画「Things Left Behind」が上映された。
同作は昨年、UBCの人類学博物館(UBC Museum of Anthropology)で開かれた石内都さんの写真展「ひろしま」の準備の様子や石内さんの思い、観客の反応などを追うNHKとの国際共同制作作品。
作品には、「ぜいたくは敵だ」とされていた当時、制約の中で隠し持たれていた美しい絹のワンピースや水玉模様のブラウスなど女性のおしゃれ心を垣間見ることができる遺品や、被曝後長距離を歩き帰宅した人の靴など、石内さんが撮影した被爆者の遺品写真が次々と登場。それらの写真を見た人々の反応や感想、自身の戦争体験を思い起こし語る人の様子などを追っていく。
ホーグランドさんは「命の面影が写真に残っている。写真を見た人それぞれ感じ方が違うし、何か自分の思いがふとよみがえる場合もある。ドキュメンタリーとして撮ったのではなく、美しく命をよみがえらせた写真たちの、何かがふとよみがえる体験を見る人にも感じてもらおうと思った」と話す。
「遺品はどれも遺族によって大切に保管されてきたもの。残された物と残された人たちの気持ちを次世代に伝えていくというのは必要だと思う。今までの広島を扱った映像とは少し違った静かな時間を通して、何か感じてもらえれば」とも。
ホーグランドさんは日本生まれで、中学校まで日本の公立校に通った。これまでに特攻隊を扱った「TOKKO-特攻」のプロデュース、安保を題材とした「ANPO」の監督と、日本関連の映像作品に携わってきた。
「日本と米国の両国に育った人間としてアメリカでの日本人の見方や歴史の見方は違うと思うこともある。(自分の作品は)商業性の映画ではないが、少しずつ大学や映画祭などで自分の作品が上映されてきているので、多くの人に見てもらいたい」と話す。