バンクーバーの革製品ブランド「Fiveleft Leather」(Suite#210-1000 Parker St., Vancouver、TEL 604-873-5522)が11月3日、1000作目のバッグ完成披露パーティーを開き、多くの人が祝いに駆け付けた。
同ブランドのオーナー兼デザイナーLincoln Hellerさんが、アートスクールに通う学費を稼ぐためにアラスカの製材所で働いていたとき、捨てられていたブーツの革を再利用してツールポーチを作ったことがきっかけで、バンクーバーに戻ってきてからオーダーメードの男性用革製品をデザイン・製作するようになり、6年前に独自ブランドを立ち上げた。クラフトショーなどで商品を紹介、販売しながら地道に販路を広げ、今年のバンクーバー・エコ・ファッション・ウイークでは、モデルたちがランウエーで使い注目を集めた。
「thend」と名付けられた1000作目のバッグ。以前デザインした「lunch box」と形は似ているが、ブラジルから取り寄せ、現在では生産されていない特別な留め金部分のクリップをはじめ、Lincolnさん自身が丁寧に編んだ取っ手、一針一針手で縫い合わせた本体部分、同ブランドの他の製品と異なりバッグの内側がスエード状でなくLincolnさんの好きな赤色でコーティングされていることなど、これまでの技術と経験、アイデアを凝縮させたマイルストーンともいえる「世界に一つだけのバッグ」になっている。当日のパーティー会場で行われたオークションで、1,100カナダドルで競り落とされた。
現在でも全ての作業をバンクーバーの小さなスタジオで行い、一つ一つのバッグには内側に製造番号の刻印とLincolnさんの直筆サインが入っている。「1000という数字は程遠いものに思っていた。それぞれのバッグを作ったときのエピソードを思い出すと感慨深い」と振り返るLincolnさん。「とにかくバッグが大好き。特にリサイクルショップにあるバッグを見ていると、バッグのデザインだけでなく、それを使っていた人とバッグの関係、どんなストーリーを持っているかを想像して楽しくなってくる。自分の思いを込めて作り上げたバッグが人の手に渡り、その人の性格やライフスタイルなど全てを吸収しながら、どんな『バッグ人生』を歩んでいくのかを考えると楽しくて仕方がない」と、バッグ作りに携わる喜びを語る。
小売店やクラフトショーなどで商品を紹介する際、「オーナーや来場客の『硬くて使いにくそうなバッグ』という第一印象を取り払い、商品に興味を持ってもらうのがとても難しい」という。「化学薬品ではなくミモザを使った自然な製法で時間をかけて革の処理を行うので、最初は硬くて使いにくくても、手に取るうちにすぐになじんできて、使えば使うほど柔らかく自分のオリジナルのものになっていく。同じデザインでほぼ同じ色をしていても、しばらくたつと全く別のバッグに変わっていくのが面白い」と説明する。
当日のパーティー会場での売り上げ(オークション分除く)のうち50%は、Dalit Freedom Network Canadaに寄付された。