10月初めにガスタウンにオープンした「Lily Mae’s Comfort Cafe」(12 Powell Street, Vancouver、TEL 604-558-2599)が、地元客を中心に「ホッと温まる場所」として人気を呼んでいる。
オーナーは、20年来のパートナーでガスタウン在住のArmand TenchaさんとJeff Jerkinsさん。「いろいろな刺激があって面白く、バラエティーに富んだ店が集まった『小さな村』のような温かみあふれるエリア。(バンクーバーには)高級レストランは十分過ぎるほどあるので、小さくてもホッとできて自然と人が集まる場所を作ろうと思った」とロケーション選択の理由を説明する。
Jerkinsさんの母親の名前から取った店名は「手が届きやすくて安心できる温かい空間」をイメージ。デザイン関係の勉強もしていたTenchaさんが内装を担当し、レンガ造りの壁を生かして「ゲストを招待するわが家」の雰囲気を演出する。1階部分と2階部分に分かれた店内には、テーブル席25席を設ける。
同店キッチンで腕を振るうのは、「Fish House in Stanley Park」で修業を積んだ韓国人シェフのRu Leeさん。「多国籍の人たちが集まった街バンクーバーらしく、フランスの家庭料理をベースにして、ちょっとひねりを加えたオリジナルメニュー」(Leeさん)を提供する。
ピリ辛のツナサンド「Edith Mae」(14カナダドル)、トマトとほうれん草とチーズのベジタリアン向けサンドイッチ「Nyla Mae」(11カナダドル)など、家族の名前を付けたメニューが並ぶほか、「ブルゴーニュ風牛肉の赤ワイン煮」(18カナダドル)や「自家製ミートボール入りリゾット」(16カナダドル)などのメーンも充実。スタッフが「シフトに入った時にいつも違うメニューを食べてみるが、いつも売り切れてしまっていて、まだ食べたことがない」と悔しがるほどの人気メニューは、しょうゆで下味を付けた牛肉と玉ネギ、マッシュルーム、赤ピーマン、チーズとローストしたガーリックを挟んだサンドイッチ「Minnie Mae」(14カナダドル)。「これだけ手が込んだ料理をここまで手頃な値段で提供しているところはあまりない」(Leeさん)。
今年4月から夏のオープンを目指して改装工事に取り組み始めたが、100年以上の歴史を持つ古い建物のため、暖房設備など細かい部分の完成にかなり時間を費やした。予定より大幅に遅れてのスタートについて、「観光客が多く、地元客も外出する機会の多い夏にオープンしたほうがいいと考えていたが、外食産業としては客足がスローになってしまう秋、冬にどれだけやれるか、この時期を乗り越えることができたらその先も順調に行けるのではないかと考えるようにした」とプラス思考のJerkinsさん。
「来てくれたお客さんたちは、自分の家に招待したゲストのつもりでもてなす。まるで自分の家にいるかのようなくつろいだ雰囲気の中で、ホッとするメニューを食べて、心も体も癒やしてもらいたい。偶然通りかかって、ふと入りたくなるような店にしたい」と抱負を語り、「数多くのレストランやカフェがひしめき、競争の激しい業界で生き残るのは至難の業。広告や宣伝に多額を投じることは難しいので、ソーシャルメディアをうまく利用していけたら。まずは、地元の人たちに受け入れてもらい、そこから客層を広げていきたい」とも。
営業時間は、火曜~金曜=11時~23時、土曜=10時~23時、日曜=10時~15時。土曜・日曜はブランチメニューも(10時~15時)。月曜定休。