バンクーバーを拠点とする世界最大規模の水上航空会社「Harbour Air Seaplanes」(本社 4760 Inglis Drive, Richmond、TEL 604-274-1277)は、昨年10月から取り組み始めた「カーボン・ニュートラル(炭素中立)」プログラムで、「2008年1月1日までに完全炭素中立化する」という当初の目標を達成した。航空会社としては世界初。
同社は、2007年7月から環境への配慮から、社内でのカーボン・オフセット(炭素相殺)活動を開始し、社員や地域からの高い評価を得た。さらに一歩進んだ取り組みとして、同年10月には自社の航空機が排出するGHG(Greenhouse Gas、温室効果ガス)を削減する企業努力を行うとともに、二酸化炭素排出量を相殺するため、バンクーバーのNPO法人(特定非営利活動法人)「Offsetters Climate Neutral Society」に15,000カナダドルを支払ったほか、カーボン・オフセット分を組み込んだ航空料金を新しく設定した。第1四半期が終了した段階で、4万カナダドル以上を同法人の地球温暖化防止プロジェクトに投資している。
「新しい料金設定に対して、乗客はとても理解を示している」と広報担当のBrandon Williamsさん。「利用客の中には、当社の飛行サービスしか使わないという人たちも出てきたほどで、否定的な意見は今のところほとんどない。カーボン・オフセットとは何か、ということについての質問がどんどん寄せられている」と、プログラムの反響について話す。
「Offsetters Climate Neutral Society」は、UBC(University of British Columbia、ブリティッシュ・コロンビア大学)の教授2人によって2005年に設立された。個人や企業からの資金を用いて、カナダ国内だけでなく世界中の再生可能な燃料やエネルギー効率の良いプロジェクトに投資して、環境破壊を防ぐことに貢献している。最近では、リッチモンドに建設中のオリンピック用スケート会場の氷が解けるときに生じる熱を集めて、会場近辺の住宅の暖房に再利用するシステム施工にも関わった。
同法人のJames Tansey最高経営責任者は「ハーバー・エアーは地球温暖化対策に向けて大きな一歩を踏み出したと言える。新しい試みにかかる費用よりも、環境への悪影響を削減し、相殺するための責任をきちんと果たそうとすることの意義は大きい」と話す。
ハーバー・エアー最高経営責任者のGreg McDougallさんは「私たちの基本理念は『常に正しいことをする』。当社が営業を続ける過程で環境に与えてしまう影響を減らすことは、まさに今行うべき正しいこと。世間の人たちが皆、地球温暖化の問題を考えている今、私たちがその先頭に立って具体的な行動をしたことで、いろいろな方面にメッセージを送ることができた」と話し、「他社も同じようなプログラムをぜひ取り入れてほしい。方法は単純で、それぞれの役割は小さく見えるが、成果はとても大きいはず」と呼びかける。
二酸化炭素は、京都議定書で排出量削減対象になっているGHGの1つ。英国を中心に始まり、北欧などヨーロッパ諸国に広まったカーボンオフセットという考え方は、主に企業が中心となって実行されている。アメリカでは「カーボン・ニュートラル」が2006年の「今年の言葉」大賞にも選ばれるなど、注目を集めている。日本でも、「カーボン・オフセット年賀はがき」の販売や、年末のイルミネーションでのカーボン・オフセット募金など認知度が高まっている。
【注1】 カーボン・ニュートラル(炭素中立):環境化学用語。排出される二酸化炭素と吸収される二酸化炭素が同じ量である、という概念。
【注2】 カーボン・オフセット(炭素相殺):自ら排出した二酸化炭素の量を計算し、排出量自体を削減するよう工夫をしたり、削減が不可能な分については、二酸化炭素の吸収に寄与する環境保護事業に対して、相応分の寄付などを行う仕組み。
Harbour Air SeaplanesOffsetters Climate Neutral Society