10月12日に日本で全国一斉公開された邦画「キッズ・リターン 再会の時」。バンクーバー国際映画祭開催中、日本に先駆けて上映された際には清水浩監督が来加、作品についての思いを語った。
同作は1996年に公開された北野武監督作品「キッズ・リターン」の主人公、マサルとシンジの10年後を描く「その後の物語」。公開から17年たった今でも根強いファンが多い前作だが、清水監督は「自分も前作では助監督をしていたし思い入れも多い作品だが、時代もキャストも違うので、(続編という形ではなく)、前回を引きずらない、もう一つのの『キッズ・リターン』として見てもらえれば」と話す。
シンジ役の平岡祐太さんが迫力のあるボクシングシーンを披露しているが、清水監督は「ボクシングの試合のシーンはある程度の試合の流れだけを決め、あとは相手のボクサーと実際に試合をしてもらい(カメラを)途中で止めずに撮った。試合中継を見ている様な臨場感を出したかった」と思い入れを語る。
ヤクザを演じるのが初めてという三浦貴大さんには「ヤクザというよりマサルを演じてほしいと話した。マサルを描きたかったので…」と話し、時代とともに変わる組の現状に苦悶(くもん)しながらもシンジとの再会につかの間の笑顔も見せるマサルを魅力的に演出する。
清水監督は「どの世界に生きていても、20代の人には社会のなかで生きていきながら思い通りに行かない現実にぶつかり、もがいたり、挫折したりすることもあると思う。そんな挫折を乗り越えようとするリターンマッチの話になっているので見てもらいたい」とも。
映画好きで入った世界で長年仕事を続けていられることについては、「自分は幸運だと本当に思う」とし、今後映画の世界を目指す若者たちには「好きな世界で理想と違う辛さに直面することもあるかもしれないが、その辛さも含めて楽しんでほしい」とアドバイスする。