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日系センターで被爆体験者の講演「忘れないでヒロシマ」 次世代へ伝える

広島での被爆体験を著書「Hiroshima: Memoirs of a Survivor」を手に語るランメル・好村幸さん

広島での被爆体験を著書「Hiroshima: Memoirs of a Survivor」を手に語るランメル・好村幸さん

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 バーナビー市の日系文化センター&博物館(6688 Southoaks Crescent, Burnaby)で11月26日、被爆体験者による講演「Hiroshima: Memoirs of a Survivor(忘れないでヒロシマ)」が行われた。

講演会には、カナダの高校生グループなど多くの人が集まった

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 現在、同館で開催中の特別展示「物部(もののふ):Warrior Spirit exhibit」の関連企画。8歳の時に広島の爆心地から西へ3.5キロの地点で被爆したランメル・好村幸(こうむら・さち)さんが講師を務めた。ランメルさんが2013年に出版した著書「忘れないでヒロシマ」の英語翻訳版「Hiroshima: Memoirs of a Survivor」から引用しながら、当時の体験や原爆、戦争に対する思いを、丁寧に言葉を選びつつ静かに語った。

 「原爆投下直後の様子やその後の体験について言葉にするのは、つらい思い出がよみがえってしまうので、今までずっと避けてきた」というランメルさん。被爆から70年が過ぎ、どんどん自分の周りの被爆者が高齢化し、当時の体験談を自分の言葉で直接伝えることができる人たちがいなくなってきたことを実感し始めたところに、2011年3月の福島原発事故が発生。「原爆の悲惨さ、恐ろしさを伝えなくては、誰もいなくなってしまう。当時のことについて身を持って知っている自分が今やらなければ」という使命感が強くなったという。

 「自分が今、幸せに暮らしているカナダで、戦争のことをあまり知らない若い世代に特に聞いてもらい、平和の尊さをしっかりと理解してもらった上で、自分たちにできることを考えるきっかけにしてもらえれば」と、2年間学校に改めて通って、著書の英訳に挑戦し英語版を完成させた。

 カナダ人高校生グループを引率して同イベントに参加していた教育機関「Eagle Q Partners」のRosemary Fergusonさんは「思い出すのもつらい体験なのに、勇気を持って私たちに話してくれたことに心から感謝している。カナダの学校ではほとんど触れられない内容の話を直接聞くことができ、生徒たちにとって大変貴重な時間になった」と感想を話す。

 ランメルさんは、昨年から地元の学校やコミュニティーセンターなどの依頼を受け、トークイベントや講演会を行っている。「私の体験談を聞いて、『そんな恐ろしいことがまた起こったらどうしよう』と怖がる子も多い」といい、「どうしたら世界が平和になると思うかと尋ねると、『人の悪口を言わない』『友達や家族と仲良くする』など、身近な小さな争い事レベルまでしか想像できず、国同士が争うという状況まで考えが及ばない平和な環境で育っていることが幸せである反面、戦争について知らないことに危機感も覚える」と話す。

 「被爆はしたが、今も元気で過ごせていることがありがたい。純粋な心を持った子どもたちに、核兵器のない平和な世界を残してあげること。それがもうすぐ80歳になる『おばあちゃん語り部』としての私の役目」と笑顔を見せる。

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