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バンクーバーで日系人作家の作品を舞台化 元捕虜の祖父と収容所体験のある祖母の物語

(写真提供= Arts Club Theatre Company/Photo by David Cooper , Griffin Cork and Yoshie Bancroft; projection design by Cindy Mochizuki)

(写真提供= Arts Club Theatre Company/Photo by David Cooper , Griffin Cork and Yoshie Bancroft; projection design by Cindy Mochizuki)

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 バンクーバーのStanley Industrial Alliance Stage(2750 Granville St. Vancouver)で1月12日、日系カナダ人作家マーク・サカモトさんの回想録「Forgiveness」の上演が始まった。劇作家・俳優のヒロ・カナガワさんによる舞台化で、Theatre Calgaryとの共同プロダクション。

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 2014年に出版され国内ベストセラーとなった「Forgiveness」は、香港で日本軍に捕えられ捕虜となった母方の祖父ラルフさんと、カナダで日系人収容所に送られた父方の祖母ミツエさんの体験を中心に書かれたサカモトさんの家族の回想録。それぞれ日本軍とカナダ政府から耐え難い扱いを受けた過去を持ちながらも「Forgiveness(許し)」の心を大切にし、お互いの子どもたちの結婚を通し家族となり、孫に憎しみではなく愛を伝えた祖父母と家族との関わりを回想する。

 舞台化を手がけたカナガワさんは「舞台化に際して思ったのは、何よりも登場人物たちのリアルな心情に焦点を当て、見る人に共感してもらうことを大切にしようと考えた。この本の素晴らしさがそこにあると考えたからだ」と話す。「登場する人は皆実在する人々なのできちんと真実を描かなくては、との責任も感じた」とも。「何十年の間にわたってたくさんの場所を舞台に展開していく物語を、限られた時間と舞台の上でどのように再現するかに苦労したが、日系人アーティストのシンディ・モチズキさんのアニメーションを取り入れることで効果的に仕上げることができた」という。

 同作品は当初、日系人の強制収容から80年の2022年に上演が予定されていたが、パンデミックのために遅延。カナガワさんは「多くの上演が中止となり演劇界は精神的にも経済的にも大変だった」と振り返りながら、「この作品に限って言えば時間をかけて仕上げることができたのは良かったと考えている。今は劇場を開ける日を迎えることができ皆が本当に喜んでいる」と制作陣が意気込む様子を話す。

 「この物語は、カナダが分断されていた時に敵対する両サイドで苦しい体験を強いられたにもかかわらず、お互いを認め合い生きた人たちの物語。現代の社会に、人は違いを認め共に生きることができると希望を示している」と話す。「パンデミックの間にアジア人に対する差別と暴力が増え、社会的や政治的な理由から分断が起こった。だからこそこの物語が持つメッセージは、過去の歴史に関する話としてだけではなく、現代にも通じる話として重要だと感じている」と、今上演することへの意義も。

 観客には「充足した時間を過ごしていってもらいたい。登場人物の感情に触れ物語を堪能してもらえれば」と呼びかける。

 チケット料金は35カナダドル~。2月12日まで。

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