作家の平野啓一郎さんが3月18日、バンクーバーのブリティッシュ・コロンビア大学、アジアンセンター(1871 West Mall, Vancouver )で講演を行った。
「Questioning, “What am I ?”(私とは何か?という問い)」と題した今回の講演。「英語はうまくないので原稿を準備した」と言いながら、最後まで英語で講演を行った平野さん。幼少期に父親を亡くした経験が自身の成長過程において「記憶と忘却」や「死」に対する考え方に影響を与えたことや、中学生ごろから芽生え始めた個人と社会の一員ということへの疑問、好んで読んでいた三島由紀夫やトーマス・マンの影響、ロストジェネレーション世代として目にする格差社会の問題にも言及、著書を通して提唱する「分人主義」という考え方などについて話した。
講演後の質疑応答では、「三島由紀夫からどのような影響を受けたか聞かせてほしい」「原作が映画化されているが、原作と脚本の間の問題についてどう思うか」「カナダで生きている日系人として、自分のアイデンティティーをどのように(自分が書いている)作品に投影するのか迷っている」などの質問に丁寧に答えた。
聴講した学生からは「『ある男』を読んだので来た。ロストジェネレーション世代と格差社会の拡大のつながりに関してもう少し知りたくなった」「『マチネの終わりに』はラブストーリーとして楽しんだが、今日の講演を聞き作家の他の側面を見たくなった」などの感想が聞かれた。