現在開催中の「バンクーバー国際映画祭(Vancouver International Film Festival)」で日本映画「世界グッドモーニング(英語題=Good Morning to the World!!)」の上映が好評のうちに終わり、来加中の廣原暁監督らが取材に応じた。
同作品は武蔵野美術大学造詣学部映像学科の卒業制作。2010年ぴあフィルムフェスティバルで審査員特別賞を受賞した。内向的な少年が現在の居場所を抜け出して、あるホームレスの男の家族探しの旅に出かけるロードムービー。廣原監督は「少年の住んでいる世界とまだ知らない世界を通して、人間の存在を考える作品にしたかった」と話す。「多くのホームレスの人たちが誰にも知られずに命を落としていくという現実を題材に、人間の存在のあいまいさをテーマの一つにしようと思った」とも。
主役の小泉陽一朗さんは製作・美術担当の篠原彩子さんの友人。廣原さんは「紹介された小泉さんは撮影当事19歳だったが役のイメージにぴったりだった。演技経験が全くなかったにもかかわらず、撮影中は役者としていろいろ考えながらとても良い演技をしてくれた」と振り返る。タイトルにもなっている「世界グッドモーニング」を歌いながらベッドで跳びはねるシーンなど、監督の指示に「期待以上の演技で応える場面が数多くあった」とも。共に来加した俳優の泉光典さんはトラック・ドライバー役で出演。「泉さん用に作ったぴったりな役」(廣原さん)で明るい青年役を好演した。
「存在」がテーマの同作品。廣原さんは「その人の空間すべてがその人の存在だと思う」とし、度々登場する部屋のシーンでは、部屋全体がほぼ見渡せる定位置からカメラを動かさずに撮影する方法も取った。
映画祭での上映は2回ともほぼ満席となり、上映後の質疑応答では地元の鑑賞客から活発な質問を受けた。バンクーバーの印象については、「街中で映画祭を楽しんでいる感じが嬉しかった。熱心に細かいところまで質問をしてくれる人が多かったのも印象的」(廣原さん)、「観客の中には多くのお年寄りも混じっているのが日本とは違ってとても良いと思った。街もゆっくりできる雰囲気で気に入った」(篠原さん)、「人が皆とにかく温かくて、いい街」(泉さん)と、それぞれを感想を述べた。
同昨品はアジア映画新人監督賞に贈られる「ドラゴン&タイガー賞」にノミネートされている。