バンクーバー島のユク-レット市沿岸での東日本大震災漂着物清掃作業中に見つかった「昭栄丸」と書かれた漁船用パレットが、8月4日にバンクーバーから日本へ運ばれ、17日に宮城県南三陸町歌津漁港の千葉義英さんの元に返還されることが決まった。
NPO法人国際ボランティア学生協会IVUSA(東京都世田谷区)とバンクーバーのボランティア団体「Japan Love Project」の共同プロジェクトとして今年3月、2日間にわたって行われた清掃作業には、日本から学生70人が参加した。日本家屋のものと思われる材木やペットボトル、発泡スチロールなど大量に収集した中に、日本語で「昭栄丸」と書かれた漁船用のパレットを見つけた参加学生の1人が「何とか持ち主を見つけ出したい」と、東京に戻ってから被災漁船情報などの調査を開始。5月初旬に気仙沼から南三陸にかけて実際に足を運んで、持ち主を発見することができたという。
「『昭栄丸』という漁船名は、人の名字でいう『佐藤』や『鈴木』のように多い名前であることが分かり、一時は調査継続すべきかどうかメンバー間で議論した。見つけられたのは奇跡に近い」と話すJapan Love Project広報の赤井絵理さん。「つらい記憶をよみがえらせてしまうパレットを返還することがよいことなのかという葛藤もあったが、その記憶の上に生きていくと決めた千葉さんにとってはかけがえのない思い出の品でもある。今後、強く生きる希望になってもらえれば」と、返還することの意味を語る。「今回の返還実現だけでなく、この3年半の間に私たちが行ってきた活動の全ては、カナダと日本をつなぐ架け橋となる活動だったと思う。ほんの小さなことであっても、カナダからできる震災復興支援として意味のあることだった」と振り返る。
Japan Love Projectは今回のパレット返還プロジェクトを最後に、団体としての活動を休止する。代表の高井洋季さんは「活動開始から3年半、国境を越えて数えきれない方々からのご支援、ご理解、ご協力を頂きながら、多くの復興プロジェクトを達成することができた。(団体設立当初)全員大学生で、後先考えずがむしゃらに日本のために何かをしようと立ち上がった私たちを100%信頼し、応援してもらえてありがたかった。団体としての活動は休止という形になるが、これからもメンバー一人ひとりができることを継続していくことに変わりはなく、Japan Love Projectであるという誇りを持ってそれぞれの道を歩んでいきたい」と感謝の気持ちと今後の抱負を語った。