バンクーバーのブリティッシュ・コロンビア大学が9月18日、日本製のソーシャルロボットをグループホームに導入し、認知症のお年寄りとロボットの交流の効果や影響などについて調べる試みを行うと発表した。
導入するのは日本のGROOVE X社が開発した家庭用ロボット「LOVOT(らぼっと)」2台。縫いぐるみのような柔らかい本体は温かさも備えており、AIを搭載。表情豊かな瞳でアイコンタクトを取りながら対話し、マイクで多彩な声を出すこと、自ら動き回り周囲の人にハグを求めることもできる。学習能力も備えているのでシチュエーションに応じた動きや反応を覚えることもできる。
今回の研究をリードする同大学看護学部のリリアン・ハン助教授は「当大学の認知症と高齢者研究に革新的な技術を導入するリサーチラボIDEAでは、テクノロジーと環境が認知症ケアに与える影響を調べている。高齢者の隔離と孤独が大きな課題となっている日本で『LOVOT』の導入が増えていると知り、ソーシャルロボットと認知機能が低下している高齢者がどのように交流し、どのような効果が望めるのかを調べようと思った」と研究の意義を説明する。
「キウイ」と「マンゴー」と名付けた2台を試験的にグループホーム数カ所に持ち込んだところ、良い反応が得られ、これまで寡黙だった認知症患者がロボットに手を伸ばして交流し、周囲を驚かす事例なども観察されたという。「人に反応するようにデザインされているロボットとの交流が高齢者にとってどんな意味と効果を持つのか、機械に日常の交流相手を求めるということが人にとって一体どんな意味を持つのかを探っていきたい」とハン助教授。
今後はパートナーとして協力してもらうことが決定しているグループホームにキウイとマンゴーを本格的に導入。観察、記録し、ホーム職員や家族にも聞き込みなどの調査を行う。成果や情報は、同様の研究を行う香港とシンガポールの研究所とも共有する。ハン助教授は「調査後は結果を発表し、今後の高齢者ケアに役立てたい。ロボットの導入と機械化が高齢者ケアの危機への解決策となるかの答えを見つける助けになるのでは」と期待する。