バンクーバー国際映画祭で作品「GONINサーガ」の上映が好評のうちに終わった。主演の東出昌大さんと共に来加した石井隆監督がインタビューに応じた。
1995年にヒットした「GONIN」から19年。その後の物語として制作された「GONINサーガ」は東出昌大さん、桐谷健太さん、土屋アンナさんらが出演し日本でも公開されたばかり。石井監督は「GONINは6作目くらいまでシナリオを用意していたが、なかなか製作段階まで行かずに月日がたってしまった。やっと角川さんから話が出て作ることができ感謝するとともに満足している」と話す。
前作に出演し、現在は療養のため芸能活動を引退している根津甚八さんが今作にも出演。不自由な体で熱演を見せ多くの観客に感動を与えた。石井監督は「根津さんには氷頭(ひず)が生きていたという設定で撮ると何年も前から伝えていた。やっと実現したので根津さんの状態に合わせ、車いすに座ったままの演技でも寝たきり患者としての演技でも出演してもらうつもりでいた。結果本当に素晴らしい姿を見せてもらえた」と感慨深げに話す。「1作目からお世話になっている竹中(直人)さんに(クライマックスの)お膳立てをしてもらい根津さんで決めるという案は最初から決めていたので、それが実現したのも良かった」とも。
2回ともチケットはほぼ完売となり、劇場前には当日券を求める人の列ができるなどバンクーバーでも注目度の高かった同作。海外での上映の感想は「まるで期待していない場面でも笑いが起こり驚いた。あまりにも笑う人が多いのでコメディーを作ったのかと思った」と冗談交じりに振り返りながら、「映画として面白ければ声に出して笑うという観客の素直な反応がいいなと思った」と話す。
実際は4時間近くなるはずだったフィルムをカットしながら2時間超に収めたが、「俳優の皆がけがをするほど頑張って芝居をしてくれていたので、全てを残そうと編集では苦労した」と明かし、「(そのため)字幕で見る人には展開が早すぎてついていけないのではと心配になった」とも。
登壇する度に監督のファッションも注目を集めたが「(服も靴も)全て自分で選んでいる。きちんとした格好が似合わないだけだから」とちゃめっ気たっぷりに話し、「70年頃に多感な時代を過ごしているのでファッションにもそれが出ているのかも」。ブーツに関しては「『ニューロック』のブーツは空港の金属探知で引っかかるので今回は『バッファロー』のブーツを履いて来た」など「通」な一面も見せた。
出演が決定した時にはまだ俳優を始めて間もない頃だった東出さんには「周りが皆猛者ばかりだったので仲良くしながら盗みなさい」とアドバイスしたと言い、「あれこれ言わずに、おりの中に放し飼いの感じだったが、とても頑張っていた。少しずつ確実に伸びてゆく俳優だ」と評した。
東出さんファンも多く詰め掛けた会場だったが、昔から石井作品が好きだったというカナダ人や日本人のファンも多くおり、監督は記念写真やサインの求めにも終始笑顔で快く応じていた。