今年2月に行われた2010ジャパンパラリンピック、アルペンスキー競技大会で1位となった谷口選手。トリノに続き2回目の出場となるカナダのパラリンピックには特別な思いで挑む。
「特別な地、カナダで金メダルを取りたい」。その強い思いは18年前へとさかのぼる。高校生の時、インターハイ出場を目指してカナダ・カルガリーでのスキー合宿中に林に激突。生死の境をさまよい命は助かるが足に障害が残った。「18歳で事故をして、今36歳。ちょうど人生の半分18年間を車いすで過ごしてきたので、人生の節目として奇跡じゃないけどカナダで何かを起こしたい」。
事故が起きた1シーズン後には、チェアスキーに乗っていたという谷口選手。カナダ人のステイシー・コホットさんがパラリンピックで金メダルを取ったという記事を読んだのがきっかけとなった。その後「どうせ狂った人生だし、いろいろな意味でチャンスかもしれない」とカルガリーへ留学。カナダ人の寛容さ、移民が多く人種も関係ないカナダという国を好きになった。
スキーの魅力について、「自然の中でスキーを滑ると別世界を感じられるところ」と笑顔で話す谷口選手。事故を負ったのもスキー、もう一度「生きよう」という気持ちが芽生えたのもスキー。5歳から始めたスキーはいつも谷口選手の人生の中にあり自身を支え続けた。「家族がいることもスキーができるのもパラリンピック出場も、大きく言えば生きていることも幸せ。自分のできる精一杯の実力を出して自分に勝ちたい。それが結果として出ればいい」。
「彰らしいと言われる滑りは、鋭い倒しこみ。クレイジーに滑ることをキーワードに力を尽くす」。谷口選手は特別な思いを胸に「自分らしい滑り」で頂点を目指す。