10月11日に閉幕した「バンクーバー国際映画祭」で、タイ洞窟の少年サッカーチーム救出劇を描いた「The Cave」(トム・ウォラー監督)が上映され、監督と共に救助チームの一員で映画にも出演したダイバーらも登壇した。
タイ洞窟の少年救出劇を描いた「The Cave」のワンシーン
2018年にタイ北部のタムルアン洞窟で起きたサッカーチームの少年とコーチの救出劇を題材にした同作。タイ人の母を持つウォラー監督は「事件が起こった時には父の国のアイルランドにおり、世界中の人たちと同様にニュースを聞きながら無事を祈っていた。タイの人たちと世界中から集まったチームが協力して救出に成功した時に映画化しようと決意した」と話す。
「この物語は救出に関わった名もないボランティアの人々の物語」とも。映画では世界中から駆け付けた洞窟ダイバーだけでなく、炊き出しなどで協力した地元の人々、洞窟の水を減らすためポンプを提供した人や、排出した水のため穀物が全滅するのを無償で受け入れた農民たちなど、救出劇の裏で活躍した人々の姿が描かれる。ウォラー監督は「救出が成功したのは世界中からタイの山奥に駆け付けた、たくさんの人々が一つになったからだと思う。映画は人々が国籍、宗教などを超えてつながることができるという希望を見せている」と話す。
救出チームの一員として実際に現地で活動したアイルランド在住の洞窟ダイバー、ジム・ウォーニーさんと、バンクーバー出身の洞窟ダイバーのエリック・ブラウンさんは同作にダイバー役として参加。迫真の演技を見せ映画にリアリティーを加え上映後に登壇した会場で大きな喝采を受けた。
映画では、アイルランドに妻を残して現地に駆け付け救助に加わったウォーニーさんの姿や、暗い洞窟の中で数時間に及んだ過酷な救出シーンが再現される。ウォーニーさんは「洞窟ダイバーというのはなぜそんな危険なことをするのだ、とよく聞かれる。実際に事故で亡くなった仲間もいる。しかし、今回はその特技で人々の役に立てたので本当に良かったと思う」と静かに話した。