11月10日に閉幕した「バンクーバーアジア映画祭(VAFF)」で日本映画「テロルンとルンルン」が上映されたのに合わせて宮川博至監督が来加し、バンクーバー経済新聞のインタビューに応じた。
広島県竹原市の海辺の町を舞台に「ひきこもり」の男性・類と聴覚障がいを持つ女子高校生・瑠海の温かくも切ない交流を描く同作。セリフが少ない中、各登場人物の心情がスクリーンを通して訴えかけてくるような演出を、宮川監督は「セリフはかなり削って削っていった」と振り返り、「限られたセリフの中で説明しがちなセリフやシーンは避け、(見た人に)想像してもらえる余地を残したかった」と話す。
「撮影2日目に一度撮ったが5日目にもう一度撮り直した」というラストシーンでは「最後の類のセリフは決まっていたが、(瑠海の)セリフを本当に彼女が伝えたかった一言になるまでいろいろと吟味した」とこだわりを明かした。固く心を閉ざし孤独を感じていた2人が迎えるラストシーンでは目頭を押さえる人の姿も会場に見られた。
上映後、観客からは「映像と共に音楽も美しかった」「ハッピーエンドでは無いが希望が持てた終わり方がとても良かった」などの感想が聞かれ、日本の「ひきこもり」に関する質問も出るなどし反響の高さがうかがわれた。同映画祭で作品選考を担当したスタッフも「もう何度も見たが、本当に美しく心が温かくなる作品」と感想を述べた。
同映画祭以外にも国内外の映画祭に出品しており、受賞も含め各地で高い評価を得ている。「海外の映画祭では上映中に笑いが起きたり、終了後に拍手が起きたりするなど観客の感情表現がストレートに伝わり、とてもうれしかった」と感想を述べ、「国内も含め映画祭を通じていろいろな人に出会えたし、多くの方に見ていただけたことは本当にありがたい」と感謝を述べた。
現在、次作の準備を進めているという宮川監督。「社会問題とされていることの中にいる人たちや社会で弱い立場にある人たちを扱った物語になる。またバンクーバーにも戻って来られたら」と次の作品に懸ける意気込みを見せた。